ドローン航路の先行地域化 浜松へ産業集積 好機に【西部 記者コラム 風紋】

 浜松市がドローン航路の未来像を全国に先駆けて確立させるモデルになるかもしれない。経済産業省は本年度まとめるデジタルライフライン全国総合整備計画で、ドローン航路の先行地域に同市の天竜川流域と埼玉県秩父地域を選ぶ方針を公表した。誰もが安全にドローンを運航でき、ビジネスを創出しやすい環境をつくるには、適切に交通整理された航路が不可欠。行政と企業の連携でいち早く航路をつくり、全国から浜松に産業集積を図る好機にしたい。
 ドローンは限定範囲での撮影、点検を中心に利用が進んでいるが、広範囲の物流、モビリティといった分野は安全運航のルールや社会インフラの未整備が進化の障壁になっている。同省は今年から先行地域に緊急着陸ポイントや監視カメラ、気象測定機器などを設置し、各種実験を支援しながら実用的な航路の規格をハード、ソフト両面で探る。
 同市が選ばれたのは、市や県、110以上の企業団体でつくる「モビリティサービス推進コンソーシアム」が、ドローンの新規ビジネスモデルを探る実験と検証を積み重ねてきたからだ。検証の結果、大半のサービスは技術的には可能だが、上空域の管制システムや高速通信網を構築する際にコストが膨らみ、実現が困難になるという障壁が見えてきた。国による支援は大きな後押しになりそうだ。
 今回、航路に設定される天竜川流域は、国の管理区域で人家が少ない。地域住民の理解が得やすく、監視も比較的容易。実証で利点が確認できれば、今後全国でも河川上空が航路の適地となりうる。
 同コンソーシアム会員で“空飛ぶクルマ”の開発に挑戦中のスズキは、天竜川と浜名湖、遠州灘沿岸の上空に接続可能な航路を設ける将来像を提唱した。高速道路や鉄道と連動した新しい交通網でドローン関連産業集積を図る、と展望する。ほかにも幅広い業種の会員企業が、協業や機体の相互利用による効率化などについて議論を始めている。
 航路の規格とビジネスモデルの検討が並行して進む様子を見ていると、具体的な未来の姿がはっきり近づいてくる感覚になる。全国を先取りするサービスがいち早く実装されるよう期待したい。
 (浜松総局・宮坂武司)

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