石川・穴水町から小山町に避難 道路寸断、渋滞…緊迫の道中

 1日夕に発生した能登半島地震で最大震度6強を観測し、甚大な被害が出ている石川県穴水町。震度5クラスの余震も続く中、同町の姫崎靖子さん(81)は5日、孫の米田朋代さん(26)と一緒に小山町須走の妹宅に避難した。道中は道の寸断や渋滞の深刻さに言葉を失ったという。米田さんは「奥能登の道は数が少なく細い。輸送車や緊急車両は適切に地域に入れているのか」と現地を案ずる。

地図を見ながら避難当時の様子を思い起こす姫崎靖子さん(右)と米田朋代さん=9日午後、小山町須走
地図を見ながら避難当時の様子を思い起こす姫崎靖子さん(右)と米田朋代さん=9日午後、小山町須走


 姫崎さんは米田さんと海沿いの穴水町古君に2人暮らし。地震発生時は帰省中の息子2人もいた。大きく長い揺れの後、津波から逃れようと4人で山側の避難所に車で急行した。米田さんは「渋滞など見たことのない山道に車列ができていた」と住民の焦りを思い起こす。カーラジオから発せられる「逃げてください」の強い口調から、事態の深刻さを感じ取ったという。
 幸い住居は津波被害を受けなかったが、電波障害でスマートフォンは無力化。インターネットも通じず、テレビはBS放送のみ。米田さんは「被害が分からず、町の情報発信も受け取れない状態。続く余震に不安が募った」と話す。井戸水を引き、正月用に飲料水を買いだめていたため難を逃れたが、地域では断水も深刻な課題となっていた。
 住居の基盤がゆがみ、安全のため妹宅に向かって避難を始めた。土砂崩れやひび割れで道路が寸断され、車の町外へのルートは大幅に制限された。通行規制などにより通常30分で通過する区間に5時間を要したという。道の段差に落ちたりパンクしたりする一般車が続出して道幅を一層狭め、緊急車両が足止めされる場面にも複数回出くわした。
 姫崎さんは現在、被災地の福祉施設に入所していた夫の安否情報すら入手できていないという。「何とか連絡が取れれば」と願う。米田さんは「現地では水が一番必要とされていると思う」とする一方で、「支援はありがたいと思うが、統制のとれた適切な支援体制が大切だと感じる」と話す。
 (御殿場支局・塩谷将広)

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