浜松医大病院、血液がん治療で実績 CAR―T細胞療法、難治性患者も効果

 浜松医科大付属病院が製薬会社から認定を受けて静岡県内で唯一行っている難病の血液がんに対する「CAR―T(カーティー)細胞療法」の治療実績が積み上がってきた。患者自身の免疫力を活用する点で従来の抗がん剤治療とはメカニズムが異なり、再発を繰り返す難治性の患者に対しても効果が期待できるという。一方で高額な医療機器が必要なことなどが普及の課題だ。
CAR―T細胞療法の仕組み
 輸血・細胞治療部の小野孝明部長らが、県内と愛知県東部の血液内科医とネットワークを作り、県内だけでなく愛知県東部の患者にも同治療が行われるようになった。紹介患者の件数は2021年の2件から23年は10件以上に増加した。
小野孝明部長
 悪性リンパ腫の「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」の患者は既存の抗がん剤が効かなくなると生存率が厳しくなることが知られている。同療法の新薬「キムリア」を投与した臨床試験では患者の約50%について、コンピューター断層撮影(CT)や陽電子放射断層撮影(PET)検査でリンパ腫が認められない「完全寛解」になったという。
高額な医療機器課題に
 課題は、リンパ球を採取する装置が約1800万円円と高額で、浜医大付属病院には一つしかないこと。ほかの患者とリンパ球の採取予定日が重なるなどした場合、CAR―T細胞療法の実施の遅延につながる。製薬会社の認定を受けるのに手順書の整備や製薬会社による複数回の施設監査など準備が必要で導入スケジュールが約半年と長期なことも普及の壁になっている。
 同病院は新しい装置を導入する費用の一部をまかなうため、1月22日から3月21日まで、目標額1千万円でクラウドファンディングを行う。専用サイト「レディーフォー」を利用する。小野部長は「高度な専門性を要する医療を患者に提供し、命を守りたい」と協力を呼びかけている。
 (浜松総局・松浦直希)

 CAR―T細胞療法 人間本来の免疫力でがんを攻撃する治療法で、がんの再発患者が主な対象。仕組みはまず、患者の体から免疫細胞の「Tリンパ球」を採取する。採取したTリンパ球に特殊な遺伝子を組み込み、血液がんの細胞の表面にある特定のタンパク質を認識する「キメラ抗原受容体」を持つCAR―T細胞を作る。患者の体内に点滴され、免疫を元気づけて標的のがん細胞を攻撃する。高熱や一時的な認知機能低下など副作用もある。浜松医科大付属病院では製剤として新薬の「キムリア」や「アベクマ」を使う。

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