記者コラム「清流」 伝統と地域守るには

 妻の実家がある沼津市我入道地区では、元旦に近隣の寺社などを多数巡り歩く「年始参り」の風習がある。コロナ禍の自粛を経て今年久々に家族で参加した。
 10カ所近い訪問先では、氏子や地域住民が甘酒などで歓待してくれる。温かな施しに感謝しつつ、以前より無人対応の場所が増えたことが気になった。関係者から担い手不足の状況を聞いていた神社を訪ねると、薄暗くて人の気配もなく、管理体制に不安を覚えた。
 静岡市内で昨年起きた寺社の屋根銅板を転売目的で剝がして盗む事件は監視が届きにくい小さな神社が標的だった。「防犯を強化したいが人手もコストもかかり難しい」。取材した住民の悲痛な声が耳に残る。少子高齢化が進む中、地域を守り伝統を継承するにはどうすればいいか。寒空の下、改めて考えさせられた。
(社会部・薬袋貴信)

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