時論(1月28日)なぜ「カネ」と片仮名表記か

 新聞用字用語集の見出し語「かね」には金遣い、金づるなどの用例が並ぶ。そこには「片仮名書きしてもよいが乱用しない」と注意書きがある。扱いとしては「政治とカネ」は特例というわけだ。
 政治資金パーティー裏金事件で自民党の「政治刷新本部」がまとめた中間報告は「カギは『お金』と『人事』から完全に決別」とした。これを各紙は見出しなどで「カネとポスト」などと報じた。
 片仮名を使う「政治とカネ」は既に慣用句と言っていい。
 日本語は初め、漢字で音を表した。この万葉仮名を崩して書くうちに平仮名が生まれた。片仮名は、読みにくい漢文を読むために漢字の一部を記号化してできた。そう、文字は記号なのだ。
 日常生活では外来語やオノマトペ(擬音・擬態語)を片仮名表記する。「みんなの日本語事典」(明治書院)はカネのようにわざと片仮名で書く例に「キレる」「おトクな情報」「バカ売れ」「もっとキレイに」などを挙げる。片仮名書きはその言葉に「限定性」や「固有性」を持たせ、強調する視覚効果もあると解説する。
 自民の中間報告は、政治資金透明化の具体策に乏しい。パーティー券購入の公開基準引き下げや、会計責任者とともに議員も処罰される「連座制」にも触れていない。
 政治家個人に渡される領収書不要の政策活動費、国会議員に月額100万円支給される調査研究広報滞在費への言及もない。
 解散と復活を繰り返してきた派閥の全廃は打ち出せず、政策集団として事実上の存続を容認した。
 看板に偽りの改革が続くと、政治も「セイジ」と書いて含みを持たせることになりかねない。センセイたちはどうお考えだろうか。
 (論説副委員長 佐藤学)

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