「生きること」全てが「詩」 松下育男さん 静岡で講演

 静岡県詩人会(金指安行会長)は、年始恒例の催事「ポエム・イン静岡」を静岡市葵区の中島屋グランドホテルで開いた。詩人の松下育男さんが「わたしの詩と生について」と題して講演した。「書く」「読む」だけでなく「生きること」全てが「詩」であると説いた。

「長嶋南子さんの詩をずしりと受け取ることは、詩と生の重要な側面だった」と語る松下育男さん=21日、静岡市葵区
「長嶋南子さんの詩をずしりと受け取ることは、詩と生の重要な側面だった」と語る松下育男さん=21日、静岡市葵区

 松下さんは7、8歳で詩を書き始め、30代で詩と距離を置いた後、50代後半に詩作を再開した。これまでの道程を振り返り、「人の詩を読むことが自分の人生を豊かにしてくれた」と語った。強く引き付けられた詩人として1986年の「ひょうたんへちま」以降、2020年までに詩集10冊を発表している長嶋南子さんを挙げた。
 松下さんは長嶋さんの新旧作品5編を5段階の進化になぞらえた。子どもの頃のちょっとしたやりとりを捉えた「ふたりのロッテ」(1995年「鞍馬天狗」所収)を「書いてあることは他の詩人と変わらないが、繊細な心で扱うから面白い詩になる」と分析した。自分を冷静に見詰め、詩の可能性を拡張し続けた創作をたたえ、「誰もいない」(2020年「海馬に乗って」所収)について「日本の詩を突き抜けた。書くべきことを何でも書ける。それだけの技術と覚悟を持った」と評した。
 講演には一般も含め、約30人が参加した。会員のたいいりょうさん、菅沼美代子さん、鳥飼丈夫さんによる自作詩の朗読も行った。
 (教育文化部・橋爪充)

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