記者コラム「清流」 無数の命に囲まれて

 午後8時過ぎ、暗い山道を運転していた車の前を何かが遮った。目を凝らすと「やっぱり」。2頭の雌ジカが道路に現れ、目の前を横切っていった。減速して衝突を回避したが、山あいでは日常的な場面。「いつかひいてしまうのではないか」と不安を抱えている。
 浜松市天竜区でもシカが増えており、行楽客の車やバイクとの衝突事故が懸念されている。野生動物との事故は「ロードキル」と呼ばれ、全国でも度々問題になっている。衝突の仕方によっては運転手が大けがを負う場合もある。
 もちろん、事故によって動物の命を奪ってしまうことにもわだかまりがある。山は動物にとって大切な居場所。山道に現れた彼らを責めることは難しい。山道では無数の命に囲まれていることを意識しながら、優しい気持ちで運転したい。
(水窪支局・大沢諒)

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