ヤマハ新社長に山浦氏 11年ぶり交代 中田氏は会長に

 ヤマハは6日の取締役会で中田卓也社長(65)が退任し、山浦敦執行役楽器・音響営業本部副本部長(56)が社長に昇格する4月1日付の人事を内定した。中田氏は代表権のない取締役会長に就き、執行役も退任する。握手を交わす山浦敦氏(左)と中田卓也社長=6日午後、浜松市中央区
 山浦氏は、新規事業開発部門などを歩み、2023年4月から中国子会社の責任者となり、低迷する中国市場において指揮を執った。「中田社長の後を継ぐ自分に求められるのは、礎の上に新たな成長を見いだすこと。ヤマハ、世界の音楽文化の発展に全力を尽くす」と抱負を述べた。
 中田氏は13年6月に社長に就任。金融危機に端を発する世界不況の影響が直撃し、中期経営計画が未達だった同社の立て直しを託された。ブランド力を高めるための投資を推進し、本社内の企業ミュージアム創設や横浜や渋谷に今年開設する研究開発拠点の設置などに尽力した。
 山浦 敦(やまうら・あつし)東大卒。1992年入社。2021年4月執行役員、22年4月執行役楽器事業本部長、23年4月執行役楽器・音響営業本部副本部長とヤマハ楽器音響(中国)投資有限公司総経理を兼務した。長野市出身。

多彩な経験評価され就任 難局打破目指す
 11年ぶりのトップ交代を6日発表したヤマハの中田卓也社長(65)は、後を継ぐ山浦敦新社長(56)について「本質を見るスキル面と人間力がある」と評価し、「事業環境が急速に変化する困難な時代に、先頭に立ってヤマハの成長をけん引してほしい」と期待を込めた。
 同社は2017年に指名委員会等設置会社に移行し、トップ人事は指名委員会で選考する。山浦氏は電子楽器のエンジニア、新規事業開発に加え、携帯電話向けの着信メロディー配信の立ち上げなどに携わってきた経験が評価されたという。
 山浦氏は社長就任に当たり、取り組むべきこととして「スピード感を持って新たな体験価値を見いだすことと音楽文化の貢献」を強調。具体的に成長が期待できる事業として車載音響ビジネスなどを挙げ、「既存事業だけでなく、ヤマハがさらに成長していく新しい成長の芽をつくりたい」と意欲を示した。
 長年トップを務めた中田社長は「心に残っているのはコロナ禍。音楽教室などの活動が一切できなくなった中、全社員がそれぞれの役割を果たし、乗り切ってくれたことに感謝している」と語った。

新社長の一問一答「新たな成長の芽つくる」
 ヤマハの中田卓也社長と新社長に就く山浦敦氏の一問一答は次の通り。会見で抱負を述べる山浦敦氏=6日午後、浜松市中央区
 ー社長就任の抱負は。
 山浦氏「ヤマハの新しい成長の芽をつくるため、簡単ではないが、当社が持つ技術や感性の力を最大限生かす。新規事業開発で関わった着信メロディー配信の立ち上げなど、成長する業務で働いた経験は自分の大きな資産」
 ー11年間を振り返ると。
 中田氏「一貫して企業価値向上を考え、ブランド発信に注力した。いろいろなことに取り組み、一定の体力、収益力がついてきた。この先は成長力が必要。今の中期経営計画で掲げる成長力強化に向け、新社長には種を形にしてほしい」
 ー中国市場をはじめ、課題への向き合い方は。
 山浦氏「中国経済は厳しく、今は需要も一時的に下がっているが、必ず復活してくると考える。中国以外にも厳しい市場や事業で何が一番困っているか見極め、サポートする。開発や生産、営業など部門ごとの連携も緊密にする」
 

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