【D自在】「国消国産」進むブロッコリー

 「君がため春の野に出でて若菜摘む わが衣手に雪は降りつつ」(光孝天皇)。率直な思いやりの気持ちに好感が持てるという人も多いのでは。若菜は春の七草のことか。7種のうち、ナズナ、スズナ(カブ)、スズシロ(ダイコン)がアブラナ科である。

収穫されたブロッコリー。花蕾がギュッと詰まっている=静岡市駿河区中島
収穫されたブロッコリー。花蕾がギュッと詰まっている=静岡市駿河区中島
収穫を待つブロッコリー=静岡市駿河区中島
収穫を待つブロッコリー=静岡市駿河区中島
花蕾(からい)の状態で収穫適期を見極める=静岡市駿河区中島
花蕾(からい)の状態で収穫適期を見極める=静岡市駿河区中島
収穫されたブロッコリー。花蕾がギュッと詰まっている=静岡市駿河区中島
収穫を待つブロッコリー=静岡市駿河区中島
花蕾(からい)の状態で収穫適期を見極める=静岡市駿河区中島

 春に十字花をつけるアブラナ科の野菜はキャベツ、白菜、小松菜、チンゲン菜、ワサビなどがある。多くは花が咲く前に収穫するので「菜の花」とは結びつきにくい。かつて菜の花と言えば菜種油を取るアブラナのことだった。灯火が石油や電力に移行して、蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」や唱歌「朧月夜(おぼろづきよ)」の歌い出しの風景は日常から遠いものになった。
 近年、存在感が高まっているアブラナ科野菜がブロッコリー。先月、国民生活に重要な「指定野菜」への2026年度追加が決まった。指定野菜は現在、ニンジンやトマトなど14品目で、追加は約50年ぶり。「特定野菜」から昇格する。市場価格が低落した場合などに生産者への補助が手厚くなるとされる。
 栄養豊富な緑黄色野菜ブロッコリーは人気が高く、国内生産も順調に伸長。22年の全国出荷量は10年前に比べ3割近く増えた。静岡県は倍増。生鮮輸入は減少しているが、冷凍ブロッコリー輸入は増加傾向にある。
 石上徹さん(65)は東名静岡インター近くの約6アールの畑で栽培する。「指定野菜になると、小規模農家にはどんな恩恵が」と眉間にしわを寄せる。「ブロッコリーは育てやすいが、規模拡大しようにも手が回らない」と話す。
 食料安全保障への関心が高まる中、消費者に支持されて国内消費が伸び、国内生産が増えるブロッコリーは「国消国産」の好事例と言えるだろう。持続可能で豊かな食と農には、担い手確保の議論が欠かせない。
(論説副委員長・佐藤学)

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