男性育休3カ月未満87% 主要113社アンケート、 静岡県内企業定着道半ば【国際女性デー2024】

 共同通信社は10日、主要113社に実施した社内の男女平等などジェンダー問題を巡るアンケート結果をまとめた。過去1年間に男性社員が取得した子ども1人当たりの平均育休取得期間が3カ月未満だった企業が87%に上った。一方、女性は6カ月以上が86%で、1年以上が6割近くとなり、取得期間に男女の間で大きな差がある実態が浮き彫りとなった。

男性と女性の平均育休取得期間
男性と女性の平均育休取得期間

 大企業には昨年4月から男性育休取得率の開示が義務付けられた。有価証券報告書によると、アンケート対象企業のうち50社が取得率は8割以上と公表し、浸透してきていることがうかがえる。だが期間をみると、依然として女性が育児の中心的役割を担うという意識が根強いと言えそうだ。
 男性の育児休業取得は家事や育児の負担を夫婦で分担し、女性の就業継続や第2子以降の出産意欲を高める狙いから推進されている。アンケートでは、男性の育休取得期間(分割取得した場合は通算)で最も多かったのは「1カ月~3カ月未満」の47%。次いで「2週間~1カ月未満」が25%、「5日~2週間未満」が13%だった。「3カ月~6カ月未満」は4%、「5日未満」は2%だった。男女とも10%前後の企業は無回答だった。
 一方、女性は男性より期間が大幅に長い傾向があり、「12カ月~18カ月未満」が51%。「6カ月~12カ月未満」が27%、「18カ月以上」が8%と続いた。6カ月未満は4%だった。
 女性の育休期間が男性よりも長くなることで生じている課題や問題について複数回答で尋ねたところ、最多は「復職後のキャリアアップの遅れ」で59%、次いで「勤務時間制限」が30%、「昇給の遅れ」が19%だった。
 大妻女子大の田中俊之准教授(男性学)は「長く休むとキャリアに響く。女性ばかりが長くならないよう夫婦で分割して取得することが望ましい」と指摘した。
 今回の調査は各業界を代表する企業を対象に昨年11~12月に実施した。

 女性活躍への取り組み 育休促進9割超
 女性のキャリア形成を支えるための取り組みが広がっている。女性活躍に向けた取り組みについて複数回答で聞くと、育休の取得促進との回答が9割超に上った。長時間労働の是正や、ハラスメント研修の充実など、働きやすい職場環境の整備に取り組む企業も多かった。
 実施する取り組みとして最多だったのは「育児休業・育児休暇の取得促進」で96%。「在宅勤務・フレックスタイム制の充実化」と「長時間労働慣行の是正」が88%で続いた。「女性幹部育成プログラム・メンター制度の導入」など、女性管理職が育つ環境の整備に注力する企業も6割を超えた。
 ただ、時短や育休の取得により「戦力外」と見なされキャリアアップが遅れるとの懸念もある。食品大手の明治は昇格に必要な経過年数について、育児休業や介護休業の取得期間を差し引かないよう社内規定を改正したという。
 国や自治体に求める施策について尋ねると「待機児童解消施策の推進」が最多の55%で、「男性の育休取得促進策拡充」が49%で続いた。一方、「フルタイムで働き続けながら育児ができる施策の拡充も期待する」(デンソー)との意見もあった。

 静岡県内企業定着 道半ば 中小 取得環境整備に課題
 県内でも男性の育児休業の定着は課題だ。厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」によると、男性育休取得率の公表を義務付けられている従業員千人超の県内企業における取得率は、高い企業では8割を超えるが、低い水準にとどまる企業もある。
 他方、中小企業における取得率は、改善は見られるものの依然として低い。常勤社員10人以上の事業所を抽出して実施する県の雇用管理状況調査によると、2022年度の男性育休取得率は21・8%。大企業同様、女性の取得率(92・2%)との乖離(かいり)が大きい。取得期間も「1週間未満」が36・5%と最多で、大企業よりさらに短い傾向にある。
 静岡労働局雇用環境・均等室は「中小企業では特に取得を支える人的態勢など環境整備が課題。今後も支援施策を強化していく必要がある」との認識を示した。
 (生活報道部・西條朋子)

 育児休業 育児・介護休業法に基づき、働く人が子どもを養育するために仕事を休む制度。期間は原則、子どもが1歳になるまで。事情があれば最長2歳まで延長できる。男女ともに2回まで分割して取得が可能。男性には、育休とは別に子どもの出生後8週間以内に最大4週間取得できる「産後パパ育休」もある。従業員数が千人超の企業には男性の育休取得率を年1回公表する義務がある。
▶特集「ジェンダー平等 企業はいま」

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞