【記者解説】静岡市24年度予算案 人口減少への対策軸に編成

 静岡市の2024年度当初予算案は、全国の政令市の中でも最も厳しい状況にある人口減少問題への対策を軸に編成した。子育て・教育環境の充実や、企業立地用地の創出など地域経済活性化に重点配分し、即効性が期待できる事業と、将来の課題解決に向けてじっくりと育てていく事業をバランスよく予算化した。
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 子育て・教育関連では子育て世代の要望が多かった屋内の遊び場を市内3カ所に開設するための予算を付けた。経済関連としては市内の地価が高く、企業が進出しにくい現状を改善するため、耕作放棄地など未利用地を有効活用する法人を立ち上げる。
 人口対策の視点で捉えると、子育て・教育関連の施策は子育て世帯に直接届く一方、経済関連の施策は効果が見えるまでに時間がかかる上、成果は民間次第の側面が強い。中長期の構えで取り組むことが必要だ。
 人口減少対策は待ったなしだ。67万7千人(23年12月末時点)と政令市で最下位の静岡市の人口は、35年には50万人を割り込むとの専門家の指摘もあり、特に若年女性の流出防止に向けた効果的な施策展開が欠かせない。市では24年度に原因分析のアンケートにようやく着手する段階で、対応は不十分と言わざるを得ない。
 JR東静岡駅北口市有地に整備を目指すアリーナについては、市は地元住民の理解が得られたとして2月上旬、急きょ基本計画策定費を当初予算案に組み込んだ。難波喬司市長が2週連続で住民説明会に足を運ぶ力の入れようだった。若者の流出に歯止めがかからず、高齢化が進む現状に風穴をあけるには、トップによるこうした調整も今後重要になる。
 歳入歳出の状況をみると、予算編成段階の財源不足は社会保障関連経費の増加などを背景に53億円に上り、財政調整基金の取り崩しなどでやりくりした。行財政改革の取り組みのうち、既存事業の廃止・規模縮小は2億5千万円分の効果にとどまった。難波市長が掲げる「社会全体の力の活用」を進めれば、さらに減らせるはずだ。

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