高校生の留学機運再燃 2024年度から静岡県教委が支援拡充

 昨年5月に新型コロナウイルスの感染症法の位置付けが5類に移行し留学機運が高まる中、静岡県教委などは2024年度から高校生の留学支援を拡充する。産学官連携組織を立ち上げ多彩なプログラムを用意。円安により負担が増す留学費用を補助し、グローバル人材の育成に力を入れる。

 文部科学省の隔年調査では、高校在学中に留学した生徒は17年度に全国で4万6千人を超え過去最多に。コロナ禍で急減したが、5類移行を経てこれまで以上に増加するとみられる。文科省の留学促進キャンペーン「トビタテ!留学JAPAN」の広報担当者によると、昨年大使館などが主催した留学説明会の来場者数は最高水準になった。「親世代は、学生時代に海外旅行をしたり仕事で海外出張を経験したりしていて、子どもにもグローバルな経験を、という熱意と勢いも増している」と実感を込める。
 静岡県内では17年度に千人超が留学した。海外提携校のある私立校や公立校英語科などの生徒が中心だが、夏期休暇などを利用して2~3週間程度の短期留学を検討する生徒も増えているという。県教委教育政策課は「コロナ下のオンラインによる一斉交流のメリットはあったが、個人のリアルな体験に勝るものはない」とし、体制整備と情報発信に力を入れる方針だ。
 静岡県は海外拠点のある企業が多いことなどを背景に、16年度に企業や団体からの寄付による「ふじのくにグローバル人材育成基金」を創設し、高校生らの留学を支えてきた。24年度からは、文科省の「トビタテ―」の拠点形成支援事業に採択されたことで、これまで30人程度だった支援対象が最大50人に拡大される。産学官の代表者による協議会を立ち上げ、ものづくりや多文化共生、観光交流といった本県の課題に対し、現地で探究活動を行う留学プログラムを設けた。個人はもちろん、4人までのチームでも応募でき、21万~89万円を支給する。
 同課の担当者は「自由な発想と想像力で、誰でも海外に飛び出すチャンスがある。海外へのハードルを下げるきっかけになれば」と期待する。
 (教育文化部・鈴木明芽)

 目的別にプログラム設定 インド2週間 磐田南・米倉さん
 高校生の場合、在籍する学校の海外提携校などに留学するケースが多いが、目的に応じて自ら留学先を決め、プログラムを組み立てる生徒もいる。
「グローバル人材育成事業」の成果報告会でインドでの体験を発表する米倉杏さん=県庁スラム街に向かう途中の景色。「厳しい環境下で手を取り合って生活する人たちがいると知り、将来世界に目を向けて活躍したいと思った」(米倉さん撮影)
 磐田南高2年の米倉杏さんは、昨年末から約2週間、インドに留学した。インドを選んだのは、親の仕事で小学生の時にインドに渡ったものの、コロナ禍によって途中帰国せざるを得なくなり「高校生になった自分がインドをどう捉えられるのか興味があった」ことと、英語力の向上が目的。高校2年の春、県の「グローバル人材育成事業」に申し込み、費用の半額分ほどの補助を得た。
 留学エージェントなどを介さず、知人の情報を基に語学学校を決定。ホームステイかホテル滞在にするか迷ったが「食事などに慣れる前に留学が終わってしまう」と、ホテルを選択した。ほかにスラム街ツアーに参加したり、市場を回ったりする日程を組んだ。
 語学学校ではスピーキングが苦手であることを指摘され「英語を試験のための学問と捉えていた」と痛感。「進路の選択肢が無限にある高校生のうちに違う文化や価値観に触れられた。計画を立てたり一人で海外に滞在したりしたことを含めて、この経験は必ず今後に生かされる」と語った。

 

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