時論(2月25日)茶行政も「イノベーション」を

 静岡県議会2月定例会に上程された2024年度予算案の茶関連事業に、物足りなさを禁じ得ない。生産も流通も日本一の「茶の都」の持続化は難題だが、突破に挑む主体性と気概が伝わってこない。
 新味がないのである。主要事業として、浜松市が会場になる第78回全国お茶まつり、25年度開催の第9回世界お茶まつりが挙げられた。「情報発信」「消費拡大」の必要性に異論はない。だがいったい、いつから使われてきた言葉か。こう書く側も、大規模イベントのたびに「一過性に終わらせるな」と常とう句を繰り返してきたが。
 この30年ほどで県内茶園は半減し、茶農家は4万戸から6千戸に。リーフ茶の価格低迷から製茶出荷額も500億円以上減少した。
 オープンイノベーションによる静岡茶の新たな価値創造を掲げる「ChaOI[チャオイ]プロジェクト」は始動から5年目になる。意図した成果は得られたか、抹茶や有機茶など先行事例の後追いに甘んじていないかの検証が必要だろう。
 プロジェクトに参集した団体や個人でつくる「ChaOIフォーラム」は県外郭団体の世界緑茶協会に運営委託している。それで議会の目が届きにくくなっていないかも含め予算審議に注目したい。
 現在はフォーラム会員がつくった事業体の提案を待っているが、県が有望なテーマ設定して茶業界内外から結集を呼びかける攻めの姿勢もほしい。そのためには情報収集など県の力量が問われる。
 地紅茶への着眼をはじめ、小規模ながら独自に活路を見いだそうとしている茶農家や茶商工業者、意欲的な新規参入者はいる。変革や刷新の旗を振るだけでなく、自ら前例踏襲を打ち破る知恵と行動を「茶の都」の行政に求めたい。
(論説副委員長・佐藤学)

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