【2024注目予算】焼津市 農業スマート化 若者の参入を後押し

 小ネギの水耕栽培を手がける農業法人グリーンテック(焼津市下江留)は3年ほど前からハウスに水量や肥料の濃度を自動で管理する装置といった先端技術を導入し、スマート化にかじを切った。昨年は生育状況をタブレットに入力し、社員全員で共有する仕組みを取り入れた。蓄積されたデータをAIに読み込ませ、生育途中の段階で収穫量が予測できるシステム構築を目指している。

生育状況をタブレットに入力する従業員=焼津市下江留
生育状況をタブレットに入力する従業員=焼津市下江留

 同社経営企画室の内田将太さんは「勘と経験ではなく、データに基づいた農業を徹底している」と現場の特徴を語る。社員のほとんどは20代、30代。安定した供給から「稼げる農業」として、若手社員は増えているという。
 「市内農業従事者の平均年齢71・2歳」。焼津市の農業は急速な高齢化に担い手不足と深刻な状況だ。市は打開策として、農業のスマート化に着目する。新年度予算案にドローンや水管理システムといったICT(情報通信技術)関連機器の購入補助を計上。関連事業費として前年度比6倍の1500万円を盛り込んだ。藤野大農政課長は「スマート化を促して、若い人が興味を持つような農業にしていく」と狙いを語る。
記者の目 稼げる産業 確立が鍵  農業従事者がこのまま減り続けていくと、少ない担い手で農地を維持していかねばならなくなる。手つかずの土地が点在する事態になれば、環境悪化を招き、まちの魅力にも響く。先端技術を生産現場に取り入れ、農業を今以上に稼げる産業として確立することが鍵となる。
 ICT関連機器を導入し、人の手で担っていた作業を自動化していけば、「自分でもできるかも」と新規就農のきっかけになるかもしれない。より多くの収穫量を求め、データを分析し、システム化していけば、「面白そう」と参入する法人も現れそうだ。
 市は農家へのスマート化支援だけではなく、農家の負担を減らすためスマート技術の農作業を受託するサービス事業体の支援にも取り組む。農業の危機を食い止めるためには、市民に対して意識の共有も不可欠と言える。
 (焼津支局・福田雄一)

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