特殊詐欺被害多い清水区 地域全体 危機感共有を【記者コラム 黒潮】

 特殊詐欺被害発生件数で毎年県内ワーストを争っている清水署管内。その様相は今年も変わっていない。2023年まで過去3年間の被害件数は静岡県内ワースト1位、2位、2位と推移しており、今年は2月21日時点の被害件数が4件と県内ワースト2位だ。
 県内では近年、特殊詐欺のうち還付金詐欺が増加傾向にある。同署管内でも、昨年速報値で36件あった特殊詐欺被害のうち、還付金詐欺は13件と、前年比4件増加した。今年もすでに2件の被害が発生し、関係機関が警戒を強める。区役所では「『還付金があるからATMに行って』と求めることはない」と強調し、「少しでも不審に感じたら、電話を切って区役所の代表電話にかけ直して」と促す。警察でも「お金とキャッシュカードの話には詐欺を疑って」と呼びかけ、電話機対策の普及を推進している。
 しかしなぜ清水区で特殊詐欺被害がこれほど多いのだろうか。同署幹部は考えられる要因の一つに交通条件を挙げる。新幹線は静岡駅と新富士駅のどちらも利用可能。JRの在来線と私鉄の静岡鉄道が並行して走っている。高速道路に目を向ければ東名、新東名、中部横断道と三つもある。端的に言えば、「逃げやすい」地域だということになる。加えて、港町特有の面倒見の良さも災いしているのかもしれない。
 犯人側に好都合な条件がそろい、現に県内有数の特殊詐欺被害が発生している同区だが、標的にされている事実を知らない人も多い。「それ詐欺じゃないですか?」。店員やほかのATM利用客が声をかけてくれたものの、「これは大丈夫だから」と振り込みを続け、被害に遭ってしまう例も少なくないと聞く。まずは「清水区は特殊詐欺被害が多い」という現状を知り、危機感を持ってほしい。
 「自分も他人もだまされるかもしれない」という意識を地域全体で共有することも重要だ。つい口にしがちな「なんでだまされちゃうの」という言葉は被害者をさらに追い詰める。「私はだまされない」という思い込みは、自らの油断と被害を招くだけでなく、他者を傷つける言葉にもつながりかねないと自覚し、住民皆で特殊詐欺に立ち向かいたい。
 (清水支局・大村花)

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