記者コラム「清流」 核廃絶の理想と現実

 「水平線に浮かぶ太陽とは違う真っ赤な物体」「地響きのような爆音」「降り注ぐ白い粉」。70年前に焼津港所属のマグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員が太平洋・ビキニ環礁で遭遇した光景だ。体験談を聞きながら、焼津から遠く離れた洋上での出来事を想像すると、恐怖心で頭がいっぱいになった。
 米国がマーシャル諸島で実施した水爆実験。洋上で操業中の乗組員もさることながら、島々に住む多くの人々も健康被害に苦しんだ。
 こんな世にも恐ろしい凶器は一刻も早くなくすべきと感じる。でも、核は拡散している。保有国全てが一斉に捨ててしまえば解決に近づくが、残念ながら世界は、とりわけ日本周辺は善意の国ばかりではない。理想を求めながら、現実に適していく外交力が必要だ。
(焼津支局・福田雄一)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞