【D自在】玉露を「しずく茶」でおいしく

 もちろん、わが家には急須がある。驚くことに、それは〝少数派〟らしい。静岡県が昨年度首都圏で行った調査に、自宅に急須があると回答した人は34%(男性の26%、女性の42%)に過ぎなかった。50代は男性の41%、女性の60%。20代は男性の18%、女性の26%。想像以上に「お茶っ葉離れ」は進んでいる。

急須を使わず玉露が味わえる「しずく飲み」(2月24日、静岡茶市場の「第3回茶いちばまつり」)
急須を使わず玉露が味わえる「しずく飲み」(2月24日、静岡茶市場の「第3回茶いちばまつり」)
「玉露の里」で朝比奈玉露の手摘みを体験する子どもたち(2023年5月)
「玉露の里」で朝比奈玉露の手摘みを体験する子どもたち(2023年5月)
急須を使わず玉露が味わえる「しずく飲み」(2月24日、静岡茶市場の「第3回茶いちばまつり」)
「玉露の里」で朝比奈玉露の手摘みを体験する子どもたち(2023年5月)

 日本茶の王様とも呼ばれる高級茶が玉露だ。自分でいれたことはなかったが、静岡茶市場(静岡市葵区)が先月開いた「茶いちばまつり」で急須を使わない玉露のセルフ試飲を体験した。茶葉は注ぎ口のある小皿に盛られ、湯ざましに入った湯と杯くらいの湯飲みとともに黒い盆に載せられて運ばれてきた。低温の湯を一度湯飲みに移し、湯飲みから茶葉に注ぎ、頃合いを見て小皿を傾けてちょろちょろ、ぽつりぽつりと湯飲みに戻しきる。小皿は「茶皿」と呼ぶらしい。
 口に含むと甘みとうまみが広がった。以前飲んだ玉露の記憶がよみがえった。ネットにある「しずく茶」「しずく飲み」というのはうまい表現だ。
 昨年6月の当欄「D自在」で、急須を使わずに氷を少しずつ溶かしながら上級リーフ茶をシャンパングラスからすする「氷水出し茶」を取り上げた。「しずく茶」も時代にふさわしい喫茶法と言えそうだ。満足感は受け身なだけでは得られない。
 玉露は緑茶の1種。緑茶、ウーロン茶、紅茶はどれもツバキ科常緑樹のチャの葉から作られ、違いは生葉を発酵(酵素による酸化)させるかどうかだ。
 玉露は栽培段階でも手間をかけ、直射日光を遮り、うまみを引き出す。藤枝市岡部町朝比奈地区は、京都・宇治、福岡・八女と並ぶ三大産地。茶文化施設「玉露の里」には「玉露の歴史・文化園」もあり、ひと通り理解ができる。
(論説副委員長・佐藤学)

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