記者コラム「清流」 散歩道

 事業開始から約20年を経て、待望の富士川かりがね橋が開通した。全長は742メートル。歩行者の通行も可能だ。
 「新しい散歩道になりそう」。2月のお披露目イベントで、橋を散策した地元の夫婦が期待を膨らめていた。片側には幅4メートルほどの広い歩道・自転車道が整備されている。照明灯や標識は目立たない場所に設置され、開けた視界からは富士川の流れ、岩本山の緑が望める。景観との調和を意識して統一されたベージュ系の配色が現代的だ。
 社会学者のジンメルは、橋は岸と岸を結びつける一方で、両岸の間にある距離をかえって人々に意識させると分析した。渋滞解消など、車移動における利便性向上に注目が集まるが、あえて徒歩で渡って心地よい「距離」を肌で感じるのもいい。
(富士支局・沢口翔斗)

いい茶0
あなたの静岡新聞 アプリ
地域再生大賞