【2024注目予算】川根本町 学校給食の家庭負担減 移住の呼び水なるか 

 過去5年間で人口が約千人減少した川根本町。急速に進む少子高齢化が顕在化し、税収減にも直結する。ただ、前年度の転出者から転入者を差し引いた「社会減」はほぼ横ばいで、移住者増加の兆しも見える。町は新年度当初予算案に小中学校の学校給食費の家庭負担を減らす事業として670万円を計上した。移住者の呼び水となるように、子育てしやすい環境整備を目指す。

川根本町の学校給食費減額事業
川根本町の学校給食費減額事業

 1人当たりの給食費を、小学校が月額3310円、中学が同3940円と、現在家庭で給食費を負担している県内市町の中で最安値となるように町が費用の一部を補填(ほてん)する。薗田靖邦町長は「人口減が進む町にとって、子ども施策は最も重要。給食は成長に欠かせない重要な制度なので、負担を軽減したかった」と強調した。
 ただ、移住してきた子育て世代の一人は「減額もうれしいが、無償化ならもっと良かったのに」と漏らす。「給食費より教材費の補助をしてほしい」といった声もあり、歓迎の声はあるものの、町民の反応はいまひとつだった。
 県内では御前崎市と小山、東伊豆、河津の3町が給食費無償化を実施している。平松敏浩教育総務課長は「(大型事業が盛り込まれた)『新町建設計画』の推進や災害復旧などが予算を圧迫し、現状は財政的に厳しい。国の動向も見ながら今後も前向きに検討したい」と説明した。
記者の目 子育ての町への決意  給食の無償化が難しい背景には、2025年度に終了する『新町建設計画』に予算を割かなければならない事情がある。町は新年度当初予算案に同計画で掲げる斎場建設(1億300万円)やし尿等中継槽建設(8000万円)など大型事業を盛り込む。また、山間地にある同町では22年の台風15号や23年の台風2号による被害も甚大で、復旧費に大きく予算を割かれる。
 町民からは無償化を求める声も上がるが、厳しい財政状況の中、恒久的な子育て支援を行うため、一般財源を活用し給食費の家庭負担の軽減を決めたことには、町の決意がにじむ。
 同町は昨年、小中一貫教育の一つの形態である義務教育学校開校に関する説明が不足していたことで一部町民から理解を得られず、必要な予算が議会で認められないなどの曲折があった。反省を生かし、対話の場を設けるなどして、官民一体で子育てしやすい町づくりへ向かっていってほしい。
 (島田支局・白鳥壱暉)

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