記者コラム「清流」 新聞記者の誇り

 時代の流れとはいえ、さみしさが拭えない春となりそうだ。40年以上も続いた地域紙庵原新聞が3月で廃刊する。ある記者さんは「筆を置いちゃだめだ」と、ペンを贈られたというエピソードを教えてくれた。
 「あっちの学校を取り上げるなら、こっちも何かないか意地でも探して平等になるよう常に気を配っていた」という苦労話を聞きこうべを垂れた。廃刊への反応は単なる感謝ではなく、情報の背後にある書き手の思いへの共感だと思う。
 新聞記者をしていて気付くのは、行間を読む読者の力と日本語の奥深さだ。昔先輩記者から「自分が分からないことは伝えられない」と言われた。経験を重ね「自分が気付いていないことも実は伝わっている」と感じる。庵原新聞のフィナーレに接し、背筋を正される思いもしている。
(清水支局・坂本昌信)

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