狩野川のカワウ食害防げ 漁協など対策本腰 繁殖期控え追跡調査

 狩野川流域でカワウによる食害が深刻なことを受け、伊豆の国市の狩野川漁業協同組合などが対策に力を入れている。昨年からGPSやドローンを用いてカワウの行動の追跡調査や駆除を続ける。カワウは川魚を食い荒らし、春先に繁殖期を迎えるため、関係者は対応を急ぐ。

カワウの調査のため、釣り針に生き餌を付けた仕掛けを確認する関係者=2月下旬、伊豆市内
カワウの調査のため、釣り針に生き餌を付けた仕掛けを確認する関係者=2月下旬、伊豆市内

 同漁協によると、狩野川流域には約千羽のカワウがいて、昨シーズンの被害額は約4500万円と推測される。1羽当たり1日約500グラムの魚を食べるとされ、特に稚アユへの食害が問題になっている。
 県によると、カワウの個体数は高止まりを続け、特に県西部や浜名湖周辺で多い。鳴き声による騒音のほか、ふん害も軽視できず、土壌を酸性化させるカワウのふんによって樹木が枯れる被害もあるという。狩野川流域には県中西部、県外からも飛来していて、一時的に移動しても再び戻ってくる習性がある。
 同漁協や伊豆市、県などは2月、市内でカワウにGPSを取り付けて行動を追跡調査した。群れが夜を過ごす「ねぐら」の場所を把握し、今後の対策に役立てるのが狙いだ。2日間にわたり、未明から早朝に調査のための学術捕獲を試み、捕獲はできなかったものの、仕掛け場所の状況把握や改善など次につながる成果を得た。
 昨年はドローンを用いた対策も実施した。ドライアイスをカワウの巣に投下し、卵を冷やして繁殖を抑える駆除方法や、ねぐらとなっている木にビニールひもを張って近寄らせない方法を試した。
 国の水産研究・教育機構の坪井潤一主任研究員によると、狩野川流域にはねぐらはあるが、営巣する「繁殖コロニー」はないとみられる。「コロニーを作らせないことが大事」とし、「繁殖期に向けて関係機関が協力して対策を進める必要がある」と訴える。
 同漁協の井川弘二郎組合長は「釣りを楽しみにしている人もいるので、狩野川がカワウ対策のモデルケースになるよう働きかけていく」と強調した。
 (大仁支局・小西龍也)
 カワウ ペリカンの仲間で、体長約80センチ、体重約2キロの大型の水鳥。環境省などによると、1950~60年代に環境汚染や干潟の埋め立てなどで激減し、全国で3千羽まで減って絶滅の恐れにあった。環境改善に伴い、80年代後半ごろから急激に増加。水に潜って大量の魚を捕食することから、国内各地で漁業被害が深刻化している。

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