県セイブ自校社長が72歳で博士号 日系外国人就労状況を全国調査

 浜松市中央区大人見町の「静岡県セイブ自動車学校」社長早川和幸さん(72)が今春、法政大大学院政策創造研究科で博士号を取得した。中小製造業で日系ブラジル人の正社員化を阻む要因を聞き取り調査から分析し、必要な施策を提唱していて、出入国在留管理局や労働局のセミナーに講師で招かれるなど成果が注目されている。

博士号を取得した早川さん=浜松市中央区
博士号を取得した早川さん=浜松市中央区

 早川さんは全国の自動車学校で初めてポルトガル語による講習を始め、外国人の正社員化を進めてきた。優秀な外国人の多さを実感する一方、社会で正社員化が広がらない点を疑問に感じ、2017年度に同研究科の修士課程に入学。主に浜松での調査で修士号を取得後、さらに全国に目を向けて研究を深めようと博士課程に挑んだ。
 浜松、愛知県、群馬県で日系人に聞き取りを重ねた結果、非正規の派遣社員は6割を占め、大多数が給与の高さより正社員化を望んでいた。かつての「早く稼いで帰国する」から「日本で安定して暮らす」へ意識の変化が進む半面、高齢になるほど日本語や技能の習得に消極的で、条件が多いハローワークの正社員募集は敬遠する傾向が見えた。
 企業側への調査では、契約の“都合の良さ”以上に外国人を多数雇用することへの“近所からの警戒感”を恐れ、正規化をためらうケースが多かったという。早川さんは「正社員化が進まない原因は企業と行政、外国人自身それぞれにありミスマッチが生じている」と指摘し、相互理解を深める場が必要だと考察した。
 70代での博士号取得は珍しいが、経営の経験を基にした研究は評価が高く、早川さんは今後も同大地域研究センターで客員研究員を務めるという。
 (浜松総局・宮坂武司)

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