折り紙と向き合い40年… 職人技の折り鶴、アクセサリーに 自閉症・杉江さんの特技、就労支援施設が商品化

 4月2日は国連が定める「世界自閉症啓発デー」。7歳の時に自閉症と診断された静岡市葵区の杉江孝之さん(57)は、40年以上折り鶴を作り続けている。その数80万羽に上る。杉江さんが通う就労支援施設「ラポール川原」(駿河区)が制作スピードと完成度を〝職人技〟と捉え、折り鶴をアクセサリーに加工し販売を始めた。

鶴を折る杉江孝之さん(手前)と作業を見守る仁科葉子さん=3月22日、静岡市駿河区のラポール川原
鶴を折る杉江孝之さん(手前)と作業を見守る仁科葉子さん=3月22日、静岡市駿河区のラポール川原
折り鶴を加工したイヤリング
折り鶴を加工したイヤリング
鶴を折る杉江孝之さん(手前)と作業を見守る仁科葉子さん=3月22日、静岡市駿河区のラポール川原
折り鶴を加工したイヤリング

 杉江さんは中学生の時、家庭教師の大学生から心身安定のために、と教えてもらって鶴を折るようになった。1日に100羽以上完成させることも。そのため母五十鈴さん(80)が千羽鶴にして各所に届けたり、家族で大きな紙に1羽ずつ並べて貼って絵画に仕上げ、展覧会に出品したりしていた。
 長らく通う「ラポール川原」でも作業の合間に折ることがあったが、5年ほど前にアクセサリー作りが趣味のスタッフ仁科葉子さん(52)の目に留まった。「圧倒された。就労支援施設として、この技を仕事に結びつけることができればと思った」と仁科さん。ただ、アクセサリーにするためには、折り紙の大きさを杉江さんが通常使う5センチ四方から3・7センチ四方に変える必要があった。杉江さんに「折っていただけますか」と小さく切った折り紙を手渡すと、違和感なく1分ほどで折り上げたという。出来上がった折り鶴を樹脂で固め、カラフルなクリスタルビーズを付けてイヤリングやブローチが誕生した。
 これまでに福祉バザーや市役所静岡庁舎内の授産製品販売店「わ・ハハ」などで販売し、客の意見を聞いて改良を重ねてきた。今後は小売店への展開を目指す。パッケージは「ラポール川原」の他の利用者が組み立てている。松岡純施設長は「杉江さんの技術に利用者とスタッフの力が合わさり、品質もデザインも自信を持っている」と話した。
 自閉症 発達障害の一つで、社会的なコミュニケーションの困難さのほか、空間や人、特定の行動への強いこだわりがみられる。脳機能の障害が原因とされるが、詳しいメカニズムは分かっていない。近年、ほかの発達障害を含めて「自閉スペクトラム症」と呼ばれている。

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