スキル生かしシニア社員「複業」 人材難の地元中小と連携 「経営者の伴走役に」 県東部に事業所 東芝テック

 複数の仕事を兼ねる「複業人材」の積極活用に向け、国の実証事業が静岡県東部で本格化している。知識と経験を有する大企業のシニア社員と、人材難に悩む地元の中小企業が連携。バブル期に大量入社したシニア社員のキャリア形成を含め、双方の課題解決への枠組み構築を目指している。

リスキリングスクールで複業人材の活躍の実情を学ぶ東芝テック社員ら=2月末、三島市内
リスキリングスクールで複業人材の活躍の実情を学ぶ東芝テック社員ら=2月末、三島市内

 「自分の強みを棚卸しできた」。三島と伊豆の国両市に事業所を構える東芝テック(東京)の社員遠山浩二さん(63)は、全5回のリスキリング(学び直し)スクールに臨み、自身を見つめ直す契機になったと明かす。
 経済産業省関東経済産業局の実証事業「地域の人事部」事務局の三島信用金庫などが昨年12月からスクールを三島市などで開講。県東部に住む60歳前後の東芝テック社員14人が、経験を振り返ってどの分野でキャリアを生かせるかを整理したり、複業人材として活躍する人の話を聞いたりした。遠山さんは「社外での勤務経験がなく、受講前は不安に感じていた。ベテラン社員が活躍できるロールモデルを作りたい」と、前向きな姿勢を示した。
 地域の人事部は2022年から関東6地域で実施。県東部では同信金と三島市、三島商工会議所、静岡銀行などの官民が連携し、首都圏の複業人材と地元中小企業のマッチングを進めている。23年度から「大企業連携」の一環で、東芝テックと取り組んでいる。
 同社は現在、労務構成の半数近くを50歳以上が占め、定年を目前とするシニア社員のキャリア形成が課題。働き方の選択肢を設けようと、複業人材として中小企業に携わる事業を始めた。再雇用嘱託として同社で働きつつ、複業人材として自信をつけ、独立も視野に入れられるキャリア教育を進めるという。
 スクール開講に携わったうさぎ企画(長泉町)の森田創代表によると、中小企業からは経営者の伴走役として複業人材を求める向きが多い。今回の参加者のうち約半分のマッチングを見込み、「バブル期の大量入社世代の処遇に悩む大企業は多いが、スキルを地域貢献に役立てる事例は他社の参考になる。他の大企業向けのプログラムも開発したい」と語った。
 (東部総局・菊地真生)

 

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