リニア工事で影響懸念の南アルプス植生 難波静岡市長、移植・播種をJRに求めず

 静岡市の難波喬司市長は12日の定例記者会見で、リニア中央新幹線トンネル工事に伴う南アルプスの植生への影響に対する代償措置の考え方について、損失が懸念される植生の移植・播種(はしゅ)は「機能しない可能性が高い」としてJR東海に求めず、鹿の食害などで失われた南アルプスの別の場所の植生を回復させれば、代償措置として認める方針を示した。市側がJRに求める対策のハードルを下げた格好だ。
 難波市長は大井川上流域にある沢のうち、JRの影響予測で水枯れが懸念される蛇抜沢を例に挙げて説明した。蛇抜沢の植物を別の所に植え替えるのではなく、別の場所で種を植えるなどして植生を増やせばいいとの認識を示した。
 難波市長は2023年11月の記者会見で、工事の影響が懸念される希少植物の移植について、長期的な根付かせが難しいとする調査結果を説明していた。
 難波市長は「JRだけで行うよりも社会全体の大きな力と協働で取り組む方が相乗効果が高い」と話し、静岡市や関係団体の活動にJRが主体的に関わる体制を構築することが重要と指摘した。工事の影響で一部の植生が損失しても、全体の生育域面積を維持、増加させることで、ユネスコエコパークに認定された南アルプスの豊かな生態系は保たれると強調した。

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