再開発の沼津アーケード街 世代交代 外部の視点鍵【記者コラム 湧水】

 防火建築で全国初のアーケード街として知られ、昭和中期は中心市街地だったアーケード名店街(沼津市町方町)の再開発が今夏、本格的に始動する。ビル解体に伴って多くの店舗が閉業や移転を決め、店主の高齢化も進み、まちづくりの担い手確保が課題になっている。外部の視点を取り入れつつ、新たなビル完成を見据えたまちづくりを次世代が主体的に取り組む必要がある。
 名店街は1954年に誕生した。2006年に再開発計画の検討が始まり、23年にエリア南西側の街区の認可が下りた。この間に閉業や移転が加速し、現在名店街全体で営業するのは20店舗以下。毎月1日開催の「ついたち市」も縮小傾向が続く。
 一方で近年、賃料の安さから、南東側の建物を中心にスケートボード専門店、タコス店などストリート文化にちなむ店舗の入居が目立つ。22年、名店街内に事務所兼店舗を置いたグラフィックデザイナー君山正好さん(51)は「オーディオ専門店の3階という立地や建物の面白さも魅力だった」と語る。
 君山さんは4月、再開発工事を前に名店街の歴史と未来について考える機会を設けようと、「アーケード名店街フェス」を企画した。運営スタッフやマルシェの出店店舗、来場者の多くは名店街外から来た10~40代。開催をサポートした町方町・通横町第一地区市街地再開発組合の水口隆太理事長(69)は「若い世代のSNSや口コミで人が集まった。定期化して、新たなビルの入居者やついたち市の世代交代につながれば」と期待する。
 28年度に1階が店舗、2階以上がマンションの複合ビルが完成するが、1階に再入居するのは3店舗のみ。来店者用の駐車場がなく利便性も課題で、店舗誘致は工事期間中のにぎわい創出が鍵になる。
 「イベント後、名店街の皆さんとあいさつしやすくなった」と君山さん。単発のイベントで終わらせず、老舗と移住者の交流を活性化させて取り組みを継続してほしい。行政も、市が主導するリノベーションや起業人材などの育成事業との連携や、入居しやすい賃料で挑戦できるお試し出店など、新規店舗が参入しやすい環境を整えるべきだ。
 (東部総局・菊地真生)

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