素材にいのちを吹き込む 針金とフェルトの世界 27日から駿府博物館
針金人形作家MASASHIさんと、立体フェルト刺しゅう作家PieniSieniさんによる作品展「素材にいのちを吹き込む-針金とフェルトの世界」(駿府博物館、静岡新聞社・静岡放送主催)が27日、静岡市駿河区の同館でスタートする。身近な素材を使って地道な作業を繰り返し、特徴を生かした独創的な世界を繰り広げる2人に、制作の過程や作品の見どころを聞いた。
(聞き手=教育文化部・名倉佐記)
色や質感 実物のように
立体フェルト刺しゅう作家 PieniSieniさん
家のあれこれをハンドメードでそろえているうちに立体フェルト刺しゅうにたどり着きました。図鑑をじっと観察して、どうやったら表現できるか、何度も頭の中で考え、試行錯誤を繰り返して作品を仕上げます。“研究”に近いですね。
型紙代わりにフェルトシートを切り、刺しゅう糸を通した針を刺していきます。フェルトも刺しゅう糸も、どこでも手に入る素材です。でも、実物のような色や質感に近づけることは簡単ではありません。
刺しゅうというと、枠を使ってチクチク針を刺すイメージを持たれますが、枠は使いません。だから私の技法を「オフフープ」と呼んでいます。もっと伝統的な立体刺しゅうの作り方もあるのですが、私は自分の感性を信じて独学でここまできました。
多くの人に「美しい」と感じてもらえる植物から、グロテスクな昆虫まで、幅広いモチーフがそろっています。立体刺しゅうの奥深さを知っていただけたらうれしいです。
感情が表れたら「完成」
針金人形作家 MASASHIさん
幼い頃、モールの束を手にした時から制作が始まりました。浮かんできたデザインをスケッチしてから形にしていきます。
制作には20本のペンチやニッパーに加え、自作の工具約30種類を使います。美しい処理を施すことだけには絶対的な自信があります。皮膜や鉄に傷が付いたり、少しでも間隔に隙間があったりすると、たとえ完成間近でもやり直します。巻き方は左右対照、全て同じ巻き数になるように処理しています。ぜひさまざまな角度から緻密な処理を見てみてください。
針金には無機質で冷たいイメージがあるかもしれません。でも人形には表情があります。感情を読み取ることができた時、一つの作品が「完成」を迎えます。命が宿ったような気がするのです。
自分が作りたいものを立体的に形にしています。それぞれの人形の世界にストーリーはおぼろげながら存在しますが、あえてそれはお伝えしません。自由に鑑賞していただけたらうれしいです。
「素材にいのちを吹き込む-針金とフェルトの世界」
■会期 4月27日~6月16日
■会場 駿府博物館 静岡市駿河区登呂3の1の1
<電054(284)3216>
■開館 午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)。月曜休館。月曜が祝日の場合は開館、翌日休館
■観覧料 高校生以上800円
主催 駿府博物館
静岡新聞社・静岡放送