「よそ者目線」で活気再び 沼津・アーケード名店街 再開発控え将来像模索 移住者主導のフェス 地元民連携

 JR沼津駅の南側に位置し、日本初の防火建築・共同建築様式の商店街といわれ、今夏に再開発事業が始まる沼津市町方町の「アーケード名店街」で、将来のあり方を模索する動きが本格化している。店舗の移転や閉業に伴ってまちづくりを担う人材確保が課題となる中、名店街に移住したグラフィックデザイナー君山正好さん(51)が4月上旬、再開発の節目を記念するイベントを初開催した。「よそ者目線」に、名店街に残る地元住民も交え、名店街の将来像を探る。

歩行者天国のステージライブを楽しむ来場者。移住者主導で再開発の節目のイベントが開かれた=4月上旬、沼津市町方町のアーケード名店街
歩行者天国のステージライブを楽しむ来場者。移住者主導で再開発の節目のイベントが開かれた=4月上旬、沼津市町方町のアーケード名店街

 「このまま歴史ある建築物を壊してほしくない」。4月上旬、「ネオ温故知新」をテーマに初開催した沼津アーケード名店街フェス。2年前、建築物を気に入り、長泉町から名店街南東側の建物に事務所を移した君山さんが声に力を込めた。
 フェスの来場者や運営スタッフの多くは名店街以外の10~40代。歩行者天国にしたステージライブや、工事に伴って転居する住民支援の不用品バザーを開き、地元内外の人たちの交流も図った。
 「街のみんなで歴史を振り返り、未来を考える機会にしたかった」と君山さん。バザーに出品した「くらやす呉服店」の室伏朋子さん(38)は久しぶりににぎわった名店街のムードと交流を喜び、「祖父母の代からの荷物が多く困っていた。まだ不用品がありそうなので、また開いてほしい」と次回を歓迎する。
 中心市街地にある名店街で、再開発計画の検討が始まったのは2006年。話し合いの長期化や住民の高齢化により、再開発が決まった南西側の建物に十数軒あった店舗の多くが、既に閉店した。28年度に完成する複合ビルに再入居するのは3店舗のみという。
 名店街の行事が縮小する中、歩行者天国のマルシェイベントは市が18年に実施した実証実験以来の開催。君山さんは「取り組みを続けたいが、民間だけでは限界がある。行政との連携を期待したい」と話す。
 イベント開催をサポートした町方町・通横町第一地区市街地再開発組合の水口隆太理事長(69)は「建物の更新に合わせて、街をつくる“細胞”も入れ替わりが必要。新しい流れと結びつきながら、昔からの住民も変わらなければいけない」と強調した。
 (東部総局・菊地真生)

 アーケード名店街 1954年、防火建築で、歩行者通路と店舗を一体化した全国初のアーケード街として誕生。昭和中期に沼津の商業の中心地としてにぎわった。2023年に県が事業計画を認可。現在の建物の意匠を引き継ぎ、1階に店舗、2階以上に105戸の住居が入る地上10階建ての複合ビルが28年度に完成する。

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