時論(4月24日)「伝わる文章」を書きたい

 伝えたいことが伝わっていないことがある。見出し(タイトル)がないためだろうか、1面コラム「大自在」の担当回で指摘されたこともある。
 読み方の問題だとスルーせず改めて読み返すと、伝える力不足に気付かされる。そんな時、図書館で「伝わる文章」と表紙にある本に出合えば、思わず手が伸びる。
 例えば、向後千春早大教授の「伝わる文章を書く技術」。表紙に「まずは200字から」「型にはめれば、必ず書ける」。半信半疑で開くと、思い当たることばかり。「交流サイトで短いメッセージしか書かないから文章を書く力が落ちる」に同感。「文章を書くと人生が変わる」というのは大げさではないと思う。
 この本はコラムやブログの文章だけでなく、企画書、報告書、依頼文、エントリーシートなど各種実用文の書き方を説いている。伝わる文章の性質として①誰に向けて書いているのかが明確②論理的③分かりやすい―を挙げる。
 新聞の論説記事で悩ましいのが、誰に向けて書くかだ。そのテーマについて知識や興味関心がない人から担当者、専門家まで幅広い。丁寧に書きたいが字数の制約がある。
 向後教授は「忙しい人でも目を通してくれる長さは1000字」とし、「型にはめれば1000字はスラスラ書けるようになる」と。本欄の上にある社説が約千字。分量として妥当とは思うが、スラスラ書けてはいない。
 本は10年前に右開き縦書きで刊行され、2019年5月、左開き横書きで再刊された。
 生成人工知能(AI)を活用すればいいという意見もあろう。これまで何冊か文章の指南書を読んだ。何より学んだのは、文章は書くことでしか上達しないということだ。
(論説副委員長・佐藤学)

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