人工ぼうこう、肛門造設 オストメイトに理解を 静岡県内で入浴・プール利用拒否相次ぐ

 がんなどの手術で腹部に人工ぼうこうや人工肛門(ストーマ)を造設した「オストメイト」から、入浴施設やプールの利用を拒否されたという事例が、当事者団体の日本オストミー協会県支部に相次いで寄せられている。同支部は「差別に当たる」として、各施設が利用を拒まないよう呼びかけを強める。

腹部に張る装具はさまざま。共同浴場やプール用に目立たない肌色もある=藤枝市立総合病院
腹部に張る装具はさまざま。共同浴場やプール用に目立たない肌色もある=藤枝市立総合病院
オストメイトのストーマ装具
オストメイトのストーマ装具
腹部に張る装具はさまざま。共同浴場やプール用に目立たない肌色もある=藤枝市立総合病院
オストメイトのストーマ装具

 県支部会員の大石茂樹さん(68)=藤枝市=は一昨年、がんが見つかったぼうこうを全摘出し、ストーマを設けた。昨年、大学時代の友人たちが愛知県内への旅行を計画した際、「皆で風呂を楽しもう」と温浴施設に着衣入浴の事前許可を得てくれた。大石さんは気後れもあったが背中を押され、紺色の半ズボン状の専用入浴着を購入した。だが、当日、湯船につかるとすぐに、従業員から「客から苦情が入った」と告げられた。浴場から出るよう促され、従ったという。
 大石さんは「入浴着に違和感を持つ人が少しでも減るよう、当事者として声を上げたい」と見据える。
 障害者差別解消法は、正当な理由なくサービスの提供を拒否することを「不当な差別的取り扱い」として禁止している。同支部によると、静岡市内でも昨年、50代男性から「衛生上の不安を理由に民間施設のプール利用を断られた」と相談があり、市の施設を紹介した。男性はひざが悪く、抗がん剤治療に向けてプールで体力を付けようとしていた。増井均同支部長は「偏見で行動範囲を狭められることがあってはならない」とし、県内で開かれる同協会の全国大会で取り上げる考えを示した。
 同支部によると、オストメイトは県内で約6200人。排せつ機能のための穴(ストーマ)を腹部に設けて、袋付きの装具を貼って過ごしている。認定看護師などに装具の管理方法を学び、浴場やプールでの対策に関する知識も備えているが、慎重になり自ら制限する傾向が強いという。
 「ストーマ外来」を展開する藤枝市立総合病院の中村利夫院長(同支部顧問医)は、「相当慣れて、初めて浴場やプールに目が向く人も多い。過酷な病を生き永らえた人にとって『日常』を実感する機会は希望そのもの。尊重してほしい」と話す。
 (社会部・大須賀伸江)

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