清水南高「演劇専攻」スタート SPAC連携、実技指導に力 新入生、5月の野外フェスタ出演

 静岡市清水区の清水南高芸術科に本年度、県内で初めてとなる演劇専攻が開設された。県舞台芸術センター(SPAC)と連携した教育によって表現力を向上させ、世界で活躍できる人材を育成する。新入生8人は早速5月3~6日、葵区の駿府城公園で開かれる「ふじのくに野外芸術フェスタ2024静岡」で、SPACの新作「白狐伝[びゃっこでん]」に合わせてパフォーマンスを披露する。

宮城嶋遥加さん(右)の指導を受ける演劇専攻の生徒=4月中旬、静岡市駿河区の静岡芸術劇場
宮城嶋遥加さん(右)の指導を受ける演劇専攻の生徒=4月中旬、静岡市駿河区の静岡芸術劇場


 同校は1986年に芸術科を設置し、音楽、美術を専門的に学ぶ環境を整備。演劇教育の導入は、県教育振興基本計画(2018~21年度)や県立高第3次長期計画(18~28年度)で、技芸を磨くための実学を充実させる新学科設置研究の一環として位置づけられた。開設に先立ち、21年度にSPACと協定を結び、カリキュラムの構築などに取り組んできた。
 演劇専攻は1年次に専門科目が週11コマある。身体表現や戯曲の読解、演劇史といった創作の基礎を、座学のほかSPACの活動拠点での実技や観劇を通して身に付ける。3年次には週18コマに増え、主に総合型選抜入試を活用して大学進学が想定されている。
 「多くのアーティストと出会い、答えのない問題に向かう時の協働の仕方を学んでほしい」。こう話すのは担当教員の片岡佐知子さん(48)。元々SPAC俳優として活動していたが、演劇専攻の開設に合わせて教員に転身した。国語教員として、重視するのは語彙[ごい]力の向上。「古典戯曲を読み解くのもさまざまな人とのコミュニケーションも言葉を知ってこそ。思考を広げるのに欠かせない」と自らの経験を基に語る。
 今月中旬、新入生8人は、「白狐伝」に関連したパフォーマンス「ミニびゃっこでん」の初稽古のため静岡芸術劇場(駿河区)を訪れた。SPACの稽古を見学後、同校の卒業生で非常勤講師の俳優宮城嶋遥加さん(29)と共にSPACの宮城聰芸術総監督の作品や岡倉天心のオペラ台本を下敷きにした「白狐伝」について理解を深めた。宮城嶋さんの口から著名な演出家の名前や専門用語が出るたびに「ちょっと調べてみて」と片岡さんから声がかかり、それぞれタブレット端末を使って調べた。
 舞台俳優を目指す太田小春さん(15)=富士市=は「プロの稽古は見ている人の呼吸までもコントロールされるような緊張感があった。貴重な経験を積み重ね、仲間と切磋琢磨[せっさたくま]していきたい」と見据えた。
 (教育文化部・鈴木明芽)

 <メモ>2021年7月に策定された県の「演劇の都」構想では四つの柱の一つとして「次世代の人材育成と風土の醸成」を挙げている。SPACは、劇場に中学生、高校生を招く鑑賞事業で生徒に演劇を体感する機会を提供するほか、高校生対象の通年講座「演劇アカデミー」、夏休みを利用して中高生が劇を作り上げる「シアタースクール」など、さまざまな切り口の演劇教育を実践している。清水南高の演劇専攻設置は、SPACが公的な学校教育により深く関与する契機となる。

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