時論(4月28日)おいしい新茶が飲みたい

 静岡県内の一番茶の生産と取引が盛期入りした。緑茶飲料にはない季節感とおいしさを茶葉(リーフ)で楽しみたい。
 消費拡大に躍起なのは、ペットボトル緑茶も同じのようだ。大手飲料メーカーはこの春、そろってパッケージや味を一新した。
 広く静岡茶、各地の川根茶、掛川茶…。緑茶ドリンクと違い、リーフ茶は産地がブランドになっている。コメやイチゴなどは品種にブランド力を持たせているが、茶は「やぶきた」くらいか。
 やぶきたは明治末期、竹やぶを開墾した茶園の北側で見いだされた。原樹と記念茶園が県立美術館(静岡市駿河区)近くにある。収量が多く香気に富む優良品種として県内はじめ全国に普及した。
 やぶきたばかりでは摘採期が重なるなど弊害があり、以前から他品種の導入や改植が呼びかけられた。今も県内茶園は9割弱がやぶきただが、ここ数年、多収量で病気に強く有機栽培に適したわせの「つゆひかり」が新風を吹き込むなどしている。やぶきたを被覆栽培したり紅茶にしたりして高付加価値化を図る生産者もいる。
 茶の品種がどれほど消費者に訴求力があるかは分からない。ただ、生産家の栽培・荒茶製造技術と、火入れ、ブレンドなど製茶問屋の仕上げ技術の“掛け算”で多様性に富んだリーフ茶ができるという知識は新茶の価値を高めよう。
 県が首都圏で行った消費者の飲用実態調査で、20代男性の8割が「急須を持っていない」と答えた。嘆くより、「持っている」2割に期待したい。
 県内には「緑茶カフェ」などリーフ茶が飲める店が中心街にも銘茶産地にもある。「茶の都」の豊かさが実感できる新茶期である。
(論説副委員長・佐藤学)
 

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