「食」の季語 科学視点で 地球科学者・尾池和夫さんが新著

 地球科学者で俳人の尾池和夫さん(83)=県立大前学長=が、科学の視点で俳句の季語を紹介するエッセー「季語を食べる 地球の恵みを科学する」(淡交社刊)を発行した。飲食にまつわる100の季語を取り上げ、身近な疑問を解くヒントとなる科学の知見をつづり、末尾に食欲をかきたてる句を添えた。

著書を手にする尾池和夫さん=静岡市駿河区の県立大
著書を手にする尾池和夫さん=静岡市駿河区の県立大

 4部構成。「季語を食べる」「季語を飲む」の部では、動植物の生態、生息環境、食文化などを示した。「昆布」「雪解」では日本の河川は急流で、地盤中のミネラルが溶け出す暇なく流れるため軟水となり、昆布のうま味を抽出できると解説。「鰻[うなぎ]」では、河川・海洋環境の変化や乱獲による資源減少の現状とともに、大井川の伏流水の恵みを生かした吉田町の養鰻[ようまん]について記述した。「健康と生命維持」の部では、薬膳や発酵食に加え、凶作などから人々を救う救荒食物に触れた。「稲と米の四季」では、日本食の根幹の米と、それを育む土壌や天候に着目した。
 尾池さんは、地元の人に食べ方を聞き、いろいろなものを食べて俳句を詠むことは健康長寿につながると説明。「食をきっかけに、多くの人に科学への関心を高めてもらえれば」と話している。
 四六判、256ページ、税込み2200円。問い合わせは淡交社<電075(432)5156>へ。
 (教育文化部・鈴木美晴)

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