亡き父思い ラッパ隊けん引 和合町西和・初代凧揚会組長の娘、子ども会盛り上げ【浜松まつり3日目】

 浜松まつり最終日の5日、浜松市中央区の凧(たこ)揚げ会場や市中心部では「こどもの日」にちなんだ子ども凧揚げや、子どもラッパ隊による演奏会などのイベントを展開した。大人たちは子どもの健やかな成長を喜ぶとともに、祭りの伝統の継承を願った。

子どもラッパ隊を盛り上げる佐藤さん=浜松市中央区の凧揚げ会場(浜松総局・山川侑哉)
子どもラッパ隊を盛り上げる佐藤さん=浜松市中央区の凧揚げ会場(浜松総局・山川侑哉)

 「オイショ、オイショ」。凧揚げ会場で行われた子ども凧揚げ。糸をたぐる町衆をもり立てる子どもラッパ隊の先頭に立ち、和合町西和子ども会会長の佐藤順子さん(41)はひときわ大きな声を上げた。佐藤さんの父小野隆司さんは、同町が祭りに初参加した36年前に初代凧揚会組長を務めた。11年前、64歳で世を去った父の思いを受け継ぎ、佐藤さんは子どもたちと町の凧を見上げた。
 佐藤さんの脳裏に焼き付いているのは、長女冬萌さん(13)の初子祝いをした2013年の祭りでの小野さんの姿。がん治療のため入院していた病院から車椅子で夜の練りに参加し、孫の誕生を祝った町衆に「ありがとうございます」と力強く叫んだ。その13日後に父は亡くなった。「今思えば、最後の力を振り絞ったのかな」と思い返す。
 ラッパ演奏が大好きで、幼少期から参加を続けてきた佐藤さん。祭りへの思いが人一倍強かった父の背中を追いかけるうちに、いつしかラッパ隊の活動を支える立場に就くことを目指すようになっていた。
 現在はラッパ隊を率いる子ども会のトップとして、まずは子どもたちがラッパに触れる機会をつくるため、気軽に参加できるような仕組みづくりを進めている。そんな佐藤さんと、同じく町の祭り組織の要職に就く夫孝則さん(50)の両親を見て育った冬萌さんら3人の子どももラッパ隊の一員だ。
 佐藤さんが仕切るラッパ隊の演奏を背に、孝則さんらが操った凧が天高く舞った。冬萌さんら子どもたちも次々に加わり、力強く糸を握った。佐藤さんは「父が始めたからこそ、次世代にもつなげていきたい」と力強く語った。
 (浜松総局・小林千菜美)

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