大蔵教義が新作狂言  「静岡に今川あり」示したい 11日臨済寺(静岡市葵区)

 駿府を治めた戦国大名今川義元を主人公にした新作狂言「今川」が11日、菩提寺[ぼだいじ]の臨済寺(静岡市葵区)で上演される。狂言師の大蔵教義が制作。「今川義元は民を思い三国を治めていた。『静岡に今川あり』と伝えたい」と、「公家かぶれ」「勝てる戦に負けた」などと揶揄[やゆ]される義元の偉大な一面を描く。

新作狂言「今川」の稽古に励む狂言師の大蔵教義
新作狂言「今川」の稽古に励む狂言師の大蔵教義

 舞台は桶狭間の戦いの後、重臣の雪斎を連れた義元が閻魔[えんま]王と相対する場面で幕を開ける。義元に対し閻魔王は桶狭間のことを「語って聞かせろ」と迫る。そして「修羅道に落ちるべき」と義元を地獄に落とそうとする。雪斎は「仏教も勉強も大切にしていた」と義元の功績を訴え、その結果、一行は極楽浄土に向かうことになる。
 義元を演じる大蔵は脚本も担当。研究が深まる実在の人物を演じるにあたり、「どう描くか、何を伝えたいか考えながら制作した」。義元の重くどっしりとした雰囲気とは対照的な、閻魔王の明るくコミカルな動きや、地獄へ落とそうとする囃子[はやし]の所作など、狂言ならではの、おかしさの演出も見どころだ。
 半年間かけて今川の功績を調べ上げた。氏親・義元父子が制定した分国法「今川仮名目録」が後世に与えた影響にも触れ、「今川があっての徳川。もっと評価されてもいい」と、雪斎に義元の人柄を語らせた理由を語った。
 200近くあるとされる古典狂言の演目は「そぎ落とされた完成形。いわばレパートリー」。それに対し新作は「責任が重い。芸歴が試されている」と背筋を伸ばす。
 公演は午後2時から。全席3千円。「今川」以外の2作も上演する。問い合わせはするが企画観光局<電054(251)5880>へ。
 (教育文化部・名倉佐記)

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