バス+JR+タクシーでやっと… 高齢者の通院、迂回余儀なく 土石流被害の熱海伊豆山、記者同行ルポ

 熱海市伊豆山の大規模土石流で国道135号や市道が通行止めになり、伊豆山からJR熱海駅方面の病院に通う高齢者らの移動が困難な状態が続いている。東海バスの臨時運行バスは熱海駅とは反対方向の湯河原駅(神奈川県湯河原町)との間。熱海駅近くの診療所まで通院する住民はJR東海道線も使っての迂回(うかい)を余儀なくされ、「通常の4倍の時間がかかる」。静岡新聞社記者が通院に同行した。

女性がたどったルート
女性がたどったルート
出発を待つ乗客。高齢者の姿が目立った=16日午前9時10分ごろ、熱海市の伊豆山バス停
出発を待つ乗客。高齢者の姿が目立った=16日午前9時10分ごろ、熱海市の伊豆山バス停
女性がたどったルート
出発を待つ乗客。高齢者の姿が目立った=16日午前9時10分ごろ、熱海市の伊豆山バス停

 女性(68)は2019年から、伊豆山バス停付近のサービス付き高齢者住宅で暮らしている。診療所で心臓病の薬の処方を受けている。土石流災害の発生前、住宅の運営会社が運行する循環バスで診療所まで約15分で着くことができた。
 16日午前9時16分発の便に乗車。出発の約20分前から高齢の住民が集まり、約20人が乗り込んだ。女性や別の乗客によると、付近には定年退職などを機に移住した人が多く住んでいるという。
 女性は都内での生活が長く、湯河原駅付近に行ったことはほぼなく「まさかこんなことになるとは」。同じバスには熱海駅近くの耳鼻科医院に向かう女性(85)や、土石流の起きた日から数日続いた断水の影響で便通が悪くなり、同駅付近の薬局へ腸の薬を買いに行く70代の人も乗っていた。
 同行した女性は午前9時44分発のJR東海道線に乗り、熱海駅に向かった。途中、車窓から見えた自宅に思わず「あっ」と声が出た。駅からはタクシーに乗り、診療所に着いたのは午前10時10分すぎ。出発から約1時間が経過した。
 女性は診療所周辺の住宅を見つめ、「こっちはもう普通に暮らしているのね」。疲れた様子でつぶやいた。
 (浜北支局・松浦直希)

 ■臨時バスは伊豆山停車せず
 東海バスが伊豆山―JR湯河原駅間のほかに臨時運行するのが、熱海駅から現在迂回(うかい)路として無料開放中の有料道路「熱海ビーチライン」を通って伊豆山に入り、七尾団地方面を循環するバス。これは伊豆山バス停に止まらず通過する。
 バス停で待つ人からは「熱海駅方面に向かうのなら、自分も乗せてほしかった」と残念がる声が聞かれた。
 同社担当者は運行系統の違いや料金設定などの理由から、七尾方面を走るバスを伊豆山バス停に止めるのは難しいと明かす。現状の2路線が臨時運行であることを強調し「国道135号などの一刻も早い復旧に期待する」と話す。

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