記者コラム「清流」 がれきの中のかき氷器
熱海市伊豆山の大規模土石流の現場に通う日々。壁が突き抜けた住宅や泥をかぶったままの車を見ていると、発生した日から時が止まっているような感覚になる。先日、がれきの中に家庭用のかき氷器が埋もれているのを見かけた。
幼い子どもがいる家から流れてきたのか。夏休みに遊びに来る孫のために老夫婦が用意した物だったのか。それとも、子どもが巣立ってもう何年も使っていない物だったのか。さまざまな想像をしているうちに、たまらない気持ちになった。
本格的な夏を迎える前に発生した土石流は、かき氷器を囲むだんらんの光景をも奪い去った。なぜこんなことになってしまったのか。やるせない気持ちを抱えたまま、季節は秋になった。