洗面台の間隔取るべき? うがい、歯磨きは飛沫飛ぶリスクも【NEXT特捜隊】

 新型コロナウイルス感染症対策として、一部の県内ショッピングモールのトイレで使用できる洗面台の数を減らし、ソーシャルディスタンス(社会的距離)を保つ対策が行われている。ただ、利用者が時間をかけて手を洗うと行列ができていることがある。「逆に密な状態になっているのでは…」。磐田市の40代女性から本社「NEXT特捜隊」(N特)に疑問の声が寄せられた。

1台ずつ間隔を空けて洗面台で手を洗う利用者=浜松市東区のイオンモール浜松市野店
1台ずつ間隔を空けて洗面台で手を洗う利用者=浜松市東区のイオンモール浜松市野店


 ソーシャルディスタンスは新たな生活様式として定着してきているが、手洗い場でも間隔を取るべきなのだろうか。取り組みを進める大規模商業施設「イオンモール浜松市野店」(浜松市東区)を訪ね、経緯や意図を聞いてみた。
 同店は週末にかけて、県内外から1日当たり約4万人が来店する。奥田豊オペレーションマネージャーによると、トイレの洗面台も多くの利用があるという。うがいをして唾液を含んだ水滴が飛ぶ可能性を考慮し、昨年6月以降は隣と1台ずつ間隔を空ける対応を取る。当初は「停止中」と貼り紙をしていたが、現在は系列店のガイドラインに基づき、混み合う時に利用を控えるよう呼び掛ける「キープディスタンス」と表示したピクトグラムで案内する。
 間隔を空けて洗面台を使う対策は感染防止に一定の効果があるのだろうか。県新型コロナ感染症対策専門家会議メンバーの操華子県立大教授(看護学)は「換気を十分に行ったり、利用者が会話を控えたりすることで、洗面台の数を制限することなく一定の予防対策は可能」と説明する。
 一方、感染の危険性は洗面台で何をするかによって変化するという。「新型コロナウイルスの主な感染経路は飛沫(ひまつ)。通常のせっけんと流水の手洗いであれば、洗い残しがなければリスクは低い。しかし歯磨きやうがいは飛沫が飛ぶため危険」と語る。
 その上で「不特定多数が利用する施設では原則、洗面台で歯磨きやうがいを禁止すれば、洗面台の数を減らす必要はないのでは」と助言する。
 行列が発生し、混雑した際の感染リスクについて、操教授は「『密回避』はくしゃみの飛沫や会話などで発生するマイクロ飛沫を防ぐことが目的。並んでいる時に不織布マスクをしていれば、行列そのものでは感染拡大しない」と言及する。
 同店で洗面台を利用していた森下日和さん(16)=浜松市在住=は「ピクトグラムが目に入ったので、間隔を保つ意識をした。対策がされている印象で安心できる」と話した。奥田さんは「お客さまに多少不便な思いをさせてしまっているかもしれないが、安全と快適を両立した施設で出迎えたい。今後も改善を重ねて良い対策を検討したい」と語った。
 質問を寄せてくれた女性に操教授の話を伝えたところ「当たり前にしている歯磨きとうがいが、リスクが高いと分かりました。危険を考慮し対策を取っていたと知って、ありがたいと思いました」と話してくれた。

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