記者コラム「清流」 泣き声許す演奏会
弦楽器の優雅な音色に包まれたコンサートホールに子どもの泣き声が何度も響いた。なのに誰も不快感を示さなかった。
富士市で開かれた「1時間の小さな演奏会」には未就学児の親子のみ招待されたからだ。跳ねて良し叫んで良し。落ち着かない子どもに配慮したルールだった。公共の場で他人に迷惑を掛けたくない保護者は安心して参加できたのではないか。
泣き止む気配がなく、子どもを抱えて退席しようとした母親がいた。いたたまれなくなったのだろう。すかさず奏者が一言「大丈夫」。聴衆もうなずいて受け入れた。
小さな子どもに本物の音楽を届ける思いで開かれた演奏会。音につられて体を動かす純粋な反応が、荘厳なホールに笑顔を咲かせていた。