御殿場市12年ぶり新市長 将来像提示と対話に期待【湧水】

 3日に投開票が行われた御殿場市長選で、元副市長の勝又正美氏(66)が初当選し、就任した。辞職した前市長の事実上の後継者として出馬し、陣営の規模で相手候補を大きく上回りながら、票差はわずかだった。当選翌日に自身が語った「市民全員のため」の市政運営を期待したい。
 静岡新聞社が期日前投票期間中に実施した出口調査で、前市長の市政運営を「評価する」「どちらかといえば評価する」と答えた有権者は約7割に達した。しかし、市長選全体の勝又氏の得票は有効投票の51・7%だった。長引くコロナ禍で閉塞(へいそく)感を抱く有権者が、「刷新」を掲げた相手候補に期待を寄せていた結果とも考えられる。
 その上で、勝又市長には二つのことを望みたい。一つは市の将来像の提示だ。市長選ではコロナ対策や経済対策が訴えの中心で、中長期的にどのような地域をつくるのか議論は乏しかった。コロナ後を見据えて将来ビジョンを市民に示し、共有してほしい。同市は首都圏に近く、世界遺産の富士山の麓に位置し、年間1千万人超の観光交流客が訪れる。こうした優位性をどう生かし持続可能な成長につなげるか具体策がほしい。前市長が掲げた環境先進都市構想の今後の位置付けも聞きたい。
 もう一つは市民との対話だ。前市長在任中に財産区繰入金の扱いを巡って、市と財産区の間に不協和音が生じ、今なお不満を抱く関係者がいる。また、移住者が多い土地でありながら、市内出身者と市外出身者を区別するような風潮が依然として残る。市内で生まれ育ち、市外出身の前市長を最も近くで支えてきた勝又市長なら、こうした溝を埋められるはずだ。情を持って市民に寄り添い、丁寧な説明をしてほしい。
 勝又市長は選挙中、43年にわたる行政経験を前面に出し「難局を乗り切るには経験と人脈が必要」と訴えた。当面の課題がコロナ対策と地域経済の回復である点に異論はない。ただ、市長の任期は4年。12年ぶりの新リーダーには、ポストコロナ社会での市の発展に向け、中長期の視点を持って市民を引っ張る力量も求められる。

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