マイン・シュロス(浜松市中区)杉本大樹さん 老舗の転換点を演出【しずおかクラフトビール新世代⑰】

 マイン・シュロス(浜松市中区)の製造部主任杉本大樹さん(34)=旧天竜市出身=は2016年、“体育会系”からビール醸造の世界へ足を踏み入れた。

釜にモルトを投入する杉本大樹さん=9月下旬、浜松市中区のマイン・シュロス
釜にモルトを投入する杉本大樹さん=9月下旬、浜松市中区のマイン・シュロス
「へレス」(右)と「ヴァイツェン」
「へレス」(右)と「ヴァイツェン」
釜にモルトを投入する杉本大樹さん=9月下旬、浜松市中区のマイン・シュロス
「へレス」(右)と「ヴァイツェン」

 1994年の酒税法改正による「第1次地ビールブーム」まっただ中の97年に設立されたレストラン併設型の同醸造所は、静岡県内屈指の老舗。「開業したばかりの頃、家族で訪れた。振り返れば、クラフトビールとの初めての接点だった」
 小中高校を通じてサッカーに没頭。名門国士舘大でもサッカー部に籍を置き、卒業後は故郷の遠州地域で仕事をしながら社会人プレーヤーとして活躍していた。
 小学生時代のおぼろげな記憶しか残っていなかった場所が職場になったのは28歳の時だった。家族を介して巡り合ったビール醸造の業務。当初は「面白そうだな」という程度の気持ちだった。
 だが、次第に探究心がふくらんだ。八ケ岳ビールタッチダウン(山梨県)、富士桜高原麦酒(同)、アオイビール(静岡市葵区)-。各地の醸造家に教えを請い、知識を深めた。「皆さん、技術を隠さない。クラフトビールそのものを広めようという意識が強い」
 醸造への情熱と技術を、自らの醸造所の変革につなげた。初出品した2019年ジャパンブルワーズカップのピルスナー部門で47品目中の2位を獲得。これを機に運営会社を説得し、瓶ビールの発売に乗り出した。
 レストランで生ビールを飲ませるスタイルを続けた醸造所が、創業22年目にして方針を転換。瓶詰めの設備も新たに導入した。「全国に出荷できるようになった。多くの人が浜松に来るきっかけになってほしい」と力を込める。
 サッカーは今も現役だ。県2部リーグの袋井SCで主にセンターバックを務め、空中戦に絶対の自信を持つ。「試合で出た課題の対処を考えて、次の試合に生かす」という思考は醸造に臨む気構えに通じる。「タンク一つ分のビールができた後、品質向上に向けてさらに何をすればいいか考える。次回に生かす」。積み上げの大切さはサッカーと同じだ。

 ■へレス 
 ■ヴァイツェン

 定番4種は創業時からつくり続けている。ドイツ伝統の「ビール純粋令」を守ったレシピは水、麦芽、ホップ、酵母以外は使わない。「ヘレス」(右)はドイツ・ミュンヘン発祥のラガービール。ドイツ産麦芽を使った黄金色のビールで、口当たりは軽め。酵母やホップの香りとともに、麦芽の甘みが存分に感じられる。
 「ヴァイツェン」もミュンヘンがあるバイエルン地方でよく飲まれるスタイル。小麦と上面発酵酵母を用いたフルーティーな味わいが特徴。苦みは少ない。

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