富の東京集中 地方都市の権限強化を【風紋】

 コロナ禍で東京と地方都市の経済力の差が広がっている。11月上旬、全国20政令市長が加盟する指定都市市長会の部会で、日銀や日本政策投資銀行の統計を基に地方の厳しい現状が協議された。地方の経済圏を守るには核となる大都市の力の強化が必要だ。
 企業の設備投資額の都道府県別割合は、2019年度と21年度の計画値を比較して東京は23%から28%に伸びた。コロナ後を見据えた投資の兆しが東京で最も顕著になっている。
 全国の一般預金残高の総額に占める都道府県別の割合は、16年7月から21年7月にかけて東京は31%から33%へ増えた。他の道府県は相対的に低下か横ばい。地方が疲弊する半面、都内では大企業が業績を伸ばし、高所得者層や高齢者層が貯蓄を増やす傾向が見て取れる。
 テレワークの定着で東京から地方への人の分散が期待されているが、統計を見る限り、むしろ富の東京集中は進んでいる。部会では「都内のネット銀行を使って住宅ローンを組む人が多い」「eコマースの普及で地方での消費が弱くなっている」など、各地の政令市長から地域経済が先細っていることへの不安が次々吐露された。産業の進化の速度差が格差の一因では―。発言から、そんな分析もうかがえた。
 地方で時代の流れに対応した有力企業を育成、創出していく必要がある。浜松市が取り組むスタートアップへの手厚い支援制度のように、自治体による斬新で機動的な施策が一層求められている。しかし、高度な権限と財源がある指定都市でさえ、財政事情や法規制が障壁になっている。
 指定都市市長会はこのほど、政令市よりさらに権限と財源が多い「特別自治市」の実現を目指す検討プロジェクトの最終報告をまとめた。県などと分け合っている地方税を一元徴収し、二重行政を解消して、捻出した財源を将来への投資に回す構想で、経済成長のビジョンも盛り込んだ。
 特別自治市の構想は都道府県の税収減への懸念などから批判的な意見もある。それでも地方都市が権限と財源を強化して経済を発展させる方策を講じなければ、格差拡大への歯止めは難しいように見える。最終報告を契機に都市制度の議論を進めてもらいたい。

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