富士宮市議会再出発へ 存在意義 示せるか鍵【湧水】

 「ようやく一歩踏み出した」-。富士宮市議会11月定例会の初日、小松快造議長はそう、力を込めた。わいせつ事件や議長選に絡んだ贈賄申し込み事件で現職市議3人の摘発に揺れた市議会は、補選で新議員5人を迎えて再出発を目指す。政治倫理条例の制定や議員定数削減を巡る議論が進む中、この町における議会議員のあるべき姿や存在意義をいかに市民に見せていけるかが鍵となる。
 元議長の逮捕・辞職などに伴い10月24日に投開票が行われた市議補選で街頭演説を見つめた市民からは市議会に対し「不信感がぬぐえない」「誠意を見える形で示してほしい」などと厳しい声が上がった。約2800票が無効票だったことの意味は重い。11月25日から12月10日まで補選で決まった新市議5人を迎えて初の定例会が開かれ、政治倫理条例制定を目指す特別委員会設置案が原案通り可決・設置された。
 特別委は新市議3人を含む各会派の代表計8人で構成し、市議会政治倫理条例制定に向けた調査・検討を継続していく。条例案は最短で、来年2月の例規審査委員会に掛けて新年度6月定例会への提出となる見通し。基本的には理念条例の体裁を想定しているという。
 相次ぐ不祥事を受けて議員定数削減を求める市民の声が高まり、区長会からは定数削減に関する要望書の提出が見込まれている。議会は区長会との対話を通じて一連の問題の“落としどころ”を探っていく構え。区長会から示される内容をベースに議会運営委員会で議論を進めていくという。
 定数削減を巡る議論の方向性について、小松議長は「区長さんたちの議員に対する考え方と議員の地域に対する考え方をすりあわせていく」との考えを示した。そうなれば「議会のあるべき姿を考える」とした政治倫理条例の議論にも通じる。議員定数削減、政治倫理条例どちらも議員の不祥事を発端に始まった議論だが、不信感を払しょくするためだけではなく、富士宮市の将来を考える視点を踏まえた「議会改革」につなげてほしい。

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