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「徳川歴代将軍の刀剣」後世に 久能山東照宮がプロジェクト始動

 静岡市駿河区の久能山東照宮は、徳川歴代将軍所用の刀剣を一部新調・復元し後世に残そうと、費用の一部を募るクラウドファンディング(CF)を始めました。このCFはわずか半日で目標額の1千万円に到達しました。プロジェクトにはより多くの費用がかかるため、引き続き5月6日まで支援を募ります。これまでの経緯や、過去の刀剣修復・保護に向けたCFをまとめました。

14本の鞘新調へ 返礼品に「刀剣乱舞」グッズ

 徳川家康をまつる久能山東照宮は6日、徳川歴代将軍所用の刀剣を後世につなぐ「刀剣伝承プロジェクト」の発表会を静岡市駿河区の同東照宮社務所で開いた。初代将軍・家康の愛刀で重要文化財の太刀「無銘 光世作(ソハヤノツルキ)」など14本について保護用の白鞘(しらさや)を新調。また、2代将軍・秀忠が奉納した国宝の太刀「銘真恒(さねつね)」の外装の拵(こしらえ)は損傷が激しく、修復できるか検証するため復元模造を制作する。同日から、費用の一部を募るクラウドファンディング(CF)を始めた。

クラウドファンディングでは、アプリゲーム「刀剣乱舞オンライン」の人気キャラクター「ソハヤノツルキ」グッズが返礼品となる=静岡市駿河区の久能山東照宮社務所
クラウドファンディングでは、アプリゲーム「刀剣乱舞オンライン」の人気キャラクター「ソハヤノツルキ」グッズが返礼品となる=静岡市駿河区の久能山東照宮社務所
 日本刀を長期間保管する際に入れておく白鞘は、寿命が30年程度とされる。一方、同東照宮の14本の白鞘は作成から160年以上たち耐久性が低下している。このままでは刀身のさびや傷の原因となる恐れがあるため新調する。銘真恒の拵は奉納から400年以上が経過。糸巻きは原形をとどめず、表面に亀裂が無数ある。途切れた制作技術もある中で、復元可能か調べるため復元模造を制作する。
 プロジェクトには総額3千万円を要するが、国などからの補助金では全額を賄えないためCFを行う。姫岡恭彦宮司は「刀剣を後世に伝承するため協力をお願いしたい」と呼びかけた。
 CFではアプリゲーム「刀剣乱舞オンライン」の人気キャラクター「ソハヤノツルキ」関連グッズなどが返礼品となる。ファッションビルなどを運営するパルコのCFサービス「ブースター」で5月6日まで募る。目標額は1千万円。
〈あなたの静岡新聞 2024.3.7〉
わずか半日で目標金額到達 5月まで継続
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パルコのクラウドファンディングサイト「ブースター」の6日午後9時頃の画像

 徳川家康をまつる久能山東照宮が6日に募集を開始した「刀剣伝承プロジェクト」のクラウドファンディング(CF)が、わずか半日で目標1千万円に達したことを受け、同東照宮博物館学芸員の宮城島由貴さん(38)は7日、「こんなに早く、多くの支援をいただきありがたい」と感謝した。
 CFは徳川歴代将軍所用の刀剣を後世につなごうと企画された。家康の愛刀で重要文化財「無銘 光世作(ソハヤノツルキ)」などの刀剣保管用の白鞘(さや)の新調、国宝の太刀「銘真恒(さねつね)」の外装の復元模造制作に役立てる。
 同東照宮による過去の刀剣修復CFの目標金額500万円と比べ、今回は目標金額を倍の1千万円と設定したが、約10時間で到達した。プロジェクト全体ではより多額の費用を要するため、宮城島さんは「文化財保護や修復のため引き続き支援をお願いしたい」と話している。
 CFはファッションビルなどを運営するパルコのサービス「ブースター」を活用し、予定通り5月6日まで続ける。3500円~100万円の寄付金額に応じて21種類の返礼品がある。アプリゲーム「刀剣乱舞オンライン」のキャラクター「ソハヤノツルキ」関連グッズが人気を集めている。
〈あなたの静岡新聞 2024.3.8〉
 

刀剣の一部新調と復元可能性調査 経緯は

 久能山東照宮博物館(静岡市駿河区)は2024年度から、徳川幕府の歴代将軍が寄進した刀剣の一部新調と復元事業を始める。初代将軍・家康の愛刀で重要文化財の太刀「無銘 光世作(ソハヤノツルキ)」をはじめ、14本の刀剣について保護用の白鞘(さや)を新調する。外装が激しく傷んでいる2代将軍・秀忠が奉納した国宝の太刀「銘真恒(さねつね)」は修復可能性を調べるため、復元模造の作成に取り組む。費用の一部について年度内には、クラウドファンディング(CF)で広く支援を募る予定。

国宝の太刀「銘真恒」に付属する拵。主に糸巻き部分が劣化している=静岡市駿河区の久能山東照宮
国宝の太刀「銘真恒」に付属する拵。主に糸巻き部分が劣化している=静岡市駿河区の久能山東照宮
 「ソハヤ―」は家康の死の2日前に罪人の試し切りを行い、切れ味の良さから、子孫鎮護の刀とすると伝えたという。なお不穏な動きがあった大坂方面に切先を向けておくよう命じたと伝わり、安寧の世への願いを込めた刀とされる。
 一部新調するのはこのほか、家康の愛刀など国宝や重要文化財に指定されている14本。刀身を保管するための外側の覆いである白鞘は、作成から160年以上たった。木地の劣化や継ぎ目の緩みにより、刀身保護が難しくなっているため、5カ年かけて新調する。
 「銘真恒」は、帯刀する際の外装である拵(こしらえ)が奉納から400年余り経過し、主に糸巻き部分が劣化。実物の修復に先立ち、そもそも江戸時代初期の作を現在の技術で再現可能か検証するため、制作当時の材料と作り方による復元模造を作成する。
 クラウドファンディングの目標額は1千万円。返礼品などは決まり次第、同東照宮のウェブサイトなどで公開する。
 (教育文化部・鈴木美晴)
〈あなたの静岡新聞 2023.12.31〉
 

2017年、神庫で発見した刀剣 輝き再び

 2018年12月2日付朝刊(内容は当時のまま)      

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修復が完了し輝きがよみがえった刀剣=静岡市駿河区の久能山東照宮博物館

 静岡市駿河区の久能山東照宮博物館で1日、室町から江戸時代にかけての刀剣の一般公開が始まった。宝物が収められている境内の「神庫」の調査で2017年9月に見つかり、修復された。公開は1月下旬ごろまで。
 刀、脇差し、短刀の計4本。発見当時はさび付いていたものの、研師が砥石(といし)で研磨するなどして輝きがよみがえった。動植物の彫刻で装飾された鞘(さや)や柄(つか)などのこしらえも展示し、来場者の関心を集めている。
 修復費用は、静岡パルコ(葵区)と協力してクラウドファンディングで調達した。500万円の目標額を大きく上回る約2900万円が集まった。
 同館学芸員の宮城島由貴さんは「皆さんの協力で、見違えるほどきれいになった。美しい刀剣の姿を見てほしい」と話している。

3年がかりで修復 ※2020年10月25日付朝刊(内容は当時のまま)
   
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刀剣の修復が完了し、喜びを語る落合宮司(左)=静岡市駿河区の久能山東照宮

 静岡市駿河区の久能山東照宮で2017年に神庫で発見された刀剣など10点の修復作業がこのほど完了し、同東照宮で報告会が行われた。関係者は「多くの人の協力で輝きを取り戻せた」と感謝と喜びを語った。
 修復されたのは、刀3点、脇差し3点、短刀1点、やり1点、太刀2点。多くの刀剣の明確な作成時期や刀工は不明だが、明治時代以降に奉納されたと推定されるという。
 修復の資金集めには、静岡市内などで商業施設を展開するパルコなどが手掛けるクラウドファンディングを利用した。刀剣を題材にした人気ゲーム「刀剣乱舞-オンライン」を制作するニトロプラス(東京都)がPRに一役買った。約4千人の支援者から、目標額の500万円を大幅に上回る3千万円弱が寄せられ、研師によるさびの除去などの費用として活用した。
 報告会で同東照宮の落合偉洲宮司は「活動への反響が大きく、関心を持ってもらえてうれしかった」と語った。ニトロプラスの小坂崇気社長は「修復に携われたのは名誉なこと。刀剣の輝きを後世に伝えることができたら」と述べた。

家康の愛刀、ナイフで再現 岐阜のメーカー 売り上げ一部寄付

 刃物生産が盛んな岐阜県関市の老舗メーカー「ニッケン刃物」が、久能山東照宮(静岡市駿河区)の協力を得て、徳川家康の愛刀「無銘 光世作」(ソハヤノツルキ)をモチーフにしたペーパーナイフの商品化を進めている。久能山東照宮の姫岡恭彦宮司(64)は「ソハヤノツルキを広く知ってもらうきっかけになれば」と期待する。

家康の愛刀「ソハヤノツルキ」をモチーフにしたペーパーナイフ
家康の愛刀「ソハヤノツルキ」をモチーフにしたペーパーナイフ
 ペーパーナイフは全長17センチで、実物の5分の1の大きさ。所蔵する久能山東照宮に監修してもらい、約4カ月間にわたって試作を重ね、刀の独特な形や身幅、茎(なかご)の刻印などをリアルに再現した。職人が丁寧に刃付けし、持ち手には透明なフッ素樹脂チューブを巻くなど、見た目と使用性の両方に気を配っている。
 同社は新型コロナウイルスの影響で、観光地で販売していたペーパーナイフなど他の商品の売り上げが減少。模索している中、刀剣ファンの声を受けて商品化に乗り出した。クラウドファンディング(CF)サイト「キャンプファイヤー」で31日まで、資金を募っている。商品はCFの返礼品として入手できる。
 売り上げの4%は久能山東照宮に寄付する。ニッケン刃物の熊田祐士社長(38)は「文化財保護のために少しでも役に立ちたい」と話した。
〈あなたの静岡新聞 2023.1.7〉
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