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⚽なでしこ1部16日開幕 静岡SSUボニータは17日に初戦

 静岡県で唯一、日本女子サッカーリーグ「なでしこリーグ」に所属する静岡SSUボニータ(磐田市)。リーグ1部2年目の今季は、17日にホーム・ヤマハスタジアムでの開幕戦で昨季覇者のオルカ鴨川と対戦します。前身の「静岡SSUアスレジーナ」で監督を務めた本田美登里氏が復帰、新体制での船出となります。SSUボニータや女子サッカーについて深掘りします。

6位以上目標 本田新体制「中長期的視点で」

 サッカー女子プレナスなでしこリーグ1部は16日に開幕する。1部2年目の静岡SSUボニータは17日、ホーム・ヤマハスタジアムでの開幕戦で昨季覇者のオルカ鴨川と対戦する。12チームが総当たりの2回戦で争う。

開幕戦に向けて調整する静岡SSUボニータ
開幕戦に向けて調整する静岡SSUボニータ

 指揮官にはウズベキスタン女子代表を率いた本田監督が復帰した。開幕まで10日足らずでの就任となったものの「時間はないが、目先の勝ち負けよりも1~2年かけてサッカーの基本や戦術を伝えたい」と中長期的な視点でチームづくりに取り組む考えだ。

 ボール保持を継続しながら「(得点が生まれやすい)バイタルエリアでの崩しを教えたい」と強調。「負けないサッカーをしながら攻撃的な部分を練習でやっていく」と話す。

 今季の主将はセンターバックの塩沢(常葉大橘高出)が務め、6位以上を目標に掲げる。「ボールを大事にするのは変わらない。攻撃的にいく」と意気込む。開幕戦でぶつかるオルカ鴨川は昨季、目の前で優勝の瞬間を見せつけられた因縁の相手だが、選手の半数が入れ替わった。

 古巣対決となるFW土屋(藤枝順心高出)は直近の中京大との練習試合で2得点し、調子を上げる。昨季はリーグ戦2得点に終わったが「絶対的なエースになりたい」と開幕戦でもゴールを狙う。

 1部初昇格した昨季は4勝5分け13敗の勝ち点17で入れ替え戦に回る11位だった。だが、2部2位のJFAアカデミー福島が1部加盟基準を満たしていなかったため、入れ替え戦が行われず1部に残留した。
〈2024.3.14 あなたの静岡新聞〉

【22年に改称し再始動】地域と二人三脚、プロリーグ「WEリーグ」目指す

利用者の歩行訓練を補助する高島絢音選手(左)=2021年12月、磐田市国府台の「磐田ケアセンターそよ風」
利用者の歩行訓練を補助する高島絢音選手(左)=2021年12月、磐田市国府台の「磐田ケアセンターそよ風」
※2022年1月31日 静岡新聞朝刊から

 サッカー女子なでしこリーグ2部の「静岡SSUボニータ」(磐田市)が、1月に静岡SSUアスレジーナからチーム名を改称して再始動した。奮闘するアマチュアの選手を雇用で支えるのが県西部の企業。プロリーグ「WEリーグ」への加盟に向けて、チームと地域の二人三脚の挑戦が始まった。

 同クラブは2008年に磐田市に発足。静岡県内で唯一日本女子サッカーリーグに所属する。22年1月から新体制になり、小川貴史監督を迎え、静岡産業大女子サッカー部の学生12人と社会人15人で構成する。4月には新1年生も加わり37人になる予定だ。社会人は半日ほど働きながら、同市の同大グラウンドを拠点に週6回練習する。現在、一部の学生と社会人全員の雇用を地元企業が支援している。

 磐田市国府台の介護施設「磐田ケアセンターそよ風」では、高島絢音選手(20)=静岡産業大3年=が、パート従業員として働いている。21年8月から週2回、利用者の歩行訓練などのリハビリ補助や、食事配膳を行っている。

 高島選手は「職場は利用者と触れ合うことができる癒やしの場。サッカーと両立しプロを目指したい」と励む。施設を運営する「ユニマット リタイアメント・コミュニティ」(東京都)は「スポーツ選手を続けながら働くことができる場はまだ少ない。卒業後、現役引退後も継続して雇用できる環境を整えたい」とした。

 杏林堂薬局(本社・浜松市中区)は16年からクラブの選手を雇用し、現在、磐田市や袋井市の店舗では6人が働いている。磐田市の店舗では、藤原加奈選手(24)が20年から週4回、商品発注など売り場管理の業務に当たっている。

 藤原選手は「練習や試合を考慮して、社員がフォローしてくれている。地域からの応援に応えられるよう、プレーで結果を出したい」と意気込む。クラブの三浦哲治代表理事は「プロ化のためには、地元企業の支援が不可欠。女子サッカー振興のため、プロリーグに所属することで子どもたちが憧れるチームづくりをしていきたい」と話した。

 <メモ>女子サッカーなでしこリーグ2部の静岡SSUボニータは、2008年に静岡産業大磐田レディースとして発足した。10年、3部に当たるチャレンジリーグ参入を機に静岡産業大磐田ボニータに名称を変更。18年に2部に昇格すると、20年、地域密着クラブとして基盤強化のため運営母体を一般社団法人スポーツユナイテッド(磐田市)に移管し、静岡産業大SSUアスレジーナになった。22年1月、約10年間地元で親しまれていたスペイン語で「美しい」「かわいい」を意味する「ボニータ」を復活させた。クラブの北本章執行役員は「さらに地域密着を図り、地元に応援されるチームにしたい」と話した。

競技人口、注目度向上で女子サッカーの価値上げる 【三浦哲治代表理事インタビュー】

三浦哲治氏
三浦哲治氏
2022年2月20日 静岡新聞朝刊から

 静岡県で唯一、日本女子サッカーリーグ「なでしこリーグ」に所属する静岡SSUボニータ(磐田市)を運営する静岡スポーツユナイテッドの代表。2022年1月、新名称で再始動したクラブの運営戦略や現状を聞いた。

 -女子サッカーを巡る現状は。

 「まだ認知度や理解度は低く、興行として成り立たせるのは難しい。サッカーといえば男子を思い浮かべる人が多数で、女子サッカーとは別競技という認識がある。特にサッカーは男子が長い間“君臨”してきたスポーツ。認識を変えるには、日本スポーツの文化自体に立ち向かわなければならない。世界的に女子スポーツの発展は遅れていて、ジェンダー不平等などの問題にも通じる。男子女子の垣根をなくす必要がある」

 -クラブが磐田に位置する意義は。

 「地方を拠点にするクラブの意義は地方創生にある。女性が社会人になってもサッカーができる環境をつくることで、UIJターンにつながり、地方に価値を生み出すことができる。県内の人口増加だけでなく、選手が地元企業で働くことによる人手不足解消にもなる。Jリーグホームタウンである磐田で女性のサッカー振興を進めることが地域活性化につながる」

 -プロリーグWEリーグ参入への考えは。

 「プロスポーツ選手になるのは子どもにとって大きな目標になるため、プロリーグに加入する意味は大きい。しかし、選手やスタッフを継続して雇用する必要があるなどハードルは高い。スポンサーを含めて地元に応援されるチームにしなくてはならない。そのために、地元企業で選手が働いたり、地元の交流センターのラジオ体操に参加したりして、地域に根付いて社会に貢献するクラブとして活動を続けていく」

 ―女子サッカー振興に向けた戦略は。

 「競技人口増加や注目度向上を図り、女子サッカーの価値を上げる。新規顧客獲得のためには今後、スタジアムの改革が必要になる。スタジアムを宿泊、映画、買い物などができる複合施設にしてはどうか。チケットを買わなくても施設内で試合を見られるようにして、席で見る場合はチケットを買う仕組みなどをつくる。別競技をできるようにしてもいい。試合会場としてだけでなく、人が集まる場にする必要がある」

 みうら・てつじ 都内企業で勤務後、1994年、静岡産業大に着任。サッカー部(男子・女子)の初代監督を務めた。2018年から現職。静岡市出身。62歳

全国初、女子に特化した「ユースダイレクター」配置

 静岡県は6日までに、静岡県サッカー協会が新たに起用を予定する「女性ユースダイレクター」について、配置に伴う費用を負担する方針を固めた。ユースダイレクターは育成年代の選手指導や指導者養成、その環境整備を担う専門職で、今回起用を見込む人材は女子選手の育成指導を担う。県は関連経費を女性スポーツ活動推進モデル構築事業として2024年度一般会計当初予算案に盛り込み、県内各種スポーツ競技の女子強化や普及の足掛かりにしたい考え。

 関係者によると、指導実績のある経験者1人を就任させる方向で調整している。女子に特化したユースダイレクターの配置は全国初という。東日本大震災の影響で日本サッカー協会(JFA)のエリート教育機関「JFAアカデミー福島」が静岡県を拠点に活動したことが縁となり、JFAの協力を得られる見通し。
 ユースダイレクターは各都道府県のサッカー協会などで活動する育成年代の責任者で、静岡県サッカー協会は現在、育成年代から青年まで男女全般の育成強化を担う指導者と契約している。新たに女性ユースダイレクターを起用することで、中学生年代を中心に県内全域の選手やチームの育成指導に目配りし、本県の女子サッカーのさらなるレベル向上と「未来のなでしこ」の育成を目指す。
 県は、本県での活動を終えるJFAアカデミー福島との交流大会開催の経費も24年度当初予算案に計上する方針で、アカデミーとの交流の継続を目指す。
 本県の女子サッカーは、県内女子スポーツをけん引する存在。全日本高校女子サッカー選手権を7度制覇した藤枝順心高や国体サッカー少年女子など活躍が目立つ。
 〈2024.2.7 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞