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公示地価 静岡県内の商業地4年ぶり上昇

 26日に発表された静岡県内公示地価(1月1日時点)では、商業地がプラス0・2%と4年ぶりの上昇でした。最も高い上昇率を示したのは熱海市銀座町で、三島市のJR三島駅周辺や長泉町も堅調な伸びを示しています。県内の中部・東部・西部に分け需給・取引情報を紹介します。

最も高い上昇率の熱海市銀座町 若い観光客でにぎわう

 新型コロナウイルス感染症の5類移行で人流が回復し、静岡県内の市街地がにぎわいを取り戻しつつある。26日に発表された県内公示地価(1月1日時点)は、商業地がプラス0・2%と4年ぶりの上昇。円安で旅先に国内を選ぶ邦人やインバウンド(訪日客)で活性化し、首都圏から近い観光地ではホテルやテナントの出店も相次ぐ。

平日の昼間から多くの人でにぎわう熱海銀座商店街=22日、熱海市
平日の昼間から多くの人でにぎわう熱海銀座商店街=22日、熱海市
 静岡県内の商業地で最も高い上昇率を示した熱海市銀座町。JR熱海駅から徒歩15分程度の熱海銀座商店街は、平日の昼間も大勢の観光客でにぎわう。同商店街振興組合の小倉一朗理事長(54)によると「感覚として観光客の7割は20~30代」。プリンや海鮮丼、ドラマのロケ地など多くの魅力を求めて若者が足を運ぶ。
 昭和期に新婚旅行やシニア観光のイメージが強まった熱海も、平成に入ると経済の停滞に伴い街は活気を失った。「15年ほど前は特にひどかった。街中を歩くのは銀行を利用する人ぐらい」。その後の町おこしで徐々に息を吹き返し、かつてシャッター通りと化した同商店街は現在34店舗全てが営業する。
 銀座町からほど近い中央渚発展会の吉田耕之助会長(77)も、かつて寂れた町並みからは「想像もつかない」と驚く。経営する質店から数十メートルの距離には26年夏の開業に向けホテルが建設される予定。ここ数年で価格帯やターゲット層が異なる宿泊施設の進出も相次ぎ、「さまざまなニーズを取り込める観光地になってきた」と感じる。
 上昇率県内2位は静岡市葵区鷹匠。利便性の高い市中心街でテナント需要が高まり、地元不動産業者は「今なら値段が高くても引き合いはある」という。市街地再開発事業が進むJR三島駅周辺でも伸びが続いている。
 〈2024.3.27 あなたの静岡新聞〉

【中部】静岡市葵区 西草深町引き合い強く/焼津市祢宜島 子育て世代関心

 

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 国土交通省が26日発表した静岡県内公示地価(1月1日時点)は、社会経済活動の正常化により商業地が4年ぶりの上昇に転じるなど、利便性の高い地域で堅調な伸びを示した。沿岸部も下落幅が若干縮小したものの、需要が高まる内陸部との二極化傾向は続く。各地の需給や取引状況を不動産関係者に聞いた。(価格は1平方メートル当たり)

静岡市葵、駿河区  
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県内商業地の最高地価地点付近=静岡市葵区呉服町

 住宅地は葵区0・8%、駿河区0・6%といずれも上昇した。中心市街地は需要が高く、土地の動きが活発化している。
 駅から徒歩圏内のエリアは引き合いが強く、葵区春日町で23万円、西草深町で38万円、駒形通で24万円など。中古の一戸建てやマンションも人気で、「強気の値にも買い手が付きやすい」という。駿河区も中田や曲金など利便性の高い地域で売れ行き良好。中村町も18万円の売買事例があった一方、沿岸部に近づくと下落傾向が顕著になる。
 商業地は葵区1・2%、駿河区0・7%の上昇。投資需要も高まっている。

静岡市清水区  2022年9月の台風15号で浸水した巴川沿いなどのエリアで下落基調が顕著になっている一方、草薙などのエリアでは上昇基調にあり、二極化が起きている。住宅地は0・6%下落。浸水した押切で分譲地用に6万7千円の取引があった。商業地は0・3%の下落。浸水した天王西で6万6千円で売り出し中だが取引が成立していない。

焼津市  住宅地は0・9%下落した。商業施設や病院、公園に近い利便性の高さから祢宜島、道原が子育て世代に引き合いが強く、6万円台の売買実例がある。JR西焼津駅に近い小土で9万円台、豊田で8万円台。JR焼津駅周辺は4万~5万円台で取引があった。大井川地区は物件の少ない状況が続く。商業地は0・6%下げた。

藤枝市  住宅地は0・1%下落した。JR藤枝駅周辺は、依然として空いている土地がない状況が続く。駅南の高柳では小学校近くの分譲地がファミリー層から人気が高く、6万~7万円台で成立した。幹線道路付近の時ケ谷で5万円台、中学校近くの音羽町で7万円台、岡部町三輪で5万円台の売買実例があった。商業地は0・4%上昇した。

島田市  住宅地は0・7%の下落。比較的人気が高い六合地区も動きが鈍い。「住宅価格の上昇が影響しているのでは。価格の安い建て売りに流れている」という。金谷地区は小学校近くの金谷根岸町で4万2千円台、夢づくり会館近辺の島で3万円台。島田地区は河原や稲荷で5万円台の取引があった。商業地は低調で、1・2%の下落。

牧之原市、吉田町  住宅地は牧之原市が1・5%、吉田町が1・8%下落した。沿岸部の引き合いは依然弱い。牧之原市では商業施設が多い細江やバイパス道路が近い波津で3万~4万円台の取引があった。吉田町は東名高速道吉田インターチェンジ周辺の引き合いが強い。商業地の取引は低調で牧之原市が2・4%、吉田町が1・9%とそれぞれ下落した。
 〈2024.3.27 あなたの静岡新聞〉

【東部】沼津 住宅地売買価格横ばい/熱海 駅前で高い需要

沼津市  住宅地は1・1%下がった。総じて需要が乏しい一方、土地造成費用などが高騰し、売買価格は横ばいで推移している。交通や生活利便性の高い沼津駅周辺は富裕層や高収入世帯の購入意欲が強い。供給は限られ、従来より2割以上高い売買事例もある。市東部は長泉町や三島市の代替地として一定の需要が続く。大岡は10万~12万円で取引される。西部や南部は値頃感から買いが入る。

沼津市の商業地の最高価格地点付近=同市大手町
沼津市の商業地の最高価格地点付近=同市大手町
 商業地も1・1%下落した。沼津駅周辺は人通りの少なさが敬遠され店舗用地としての需要は低調だが、賃貸を含む住居用地として求める動きがある。

三島市  市全体で0・2%の上昇。三島駅南口再開発への期待感から駅周辺の住宅地の引き合いは依然として強く、寿町では21万円超の売買があった。利便性の良い旧市街地は人気が高く、加茂川町で18万円の取引も。ただ、建築費高騰で住宅全体の価格が高くなり、売買自体は少ないという。郊外は下落傾向にあり二極化が進む。

富士市  工業地が0・3%上昇。東名高速道や国1バイパス至近の大淵や五貫島などは企業の関心が高い。住宅地は横ばいで推移する地区が増え、下げ幅は縮小した。取引では6万円台で条件がそろう森島などで活発。一方、空き家の供給は市域全体で増え、地価上昇を抑える要因になっている。商業地は下落が落ち着き、一部は上昇に転じ始めた。

富士宮市  住宅地は0・5%下落で、市全体では依然として供給過多。広い分譲地が確保できる小泉は人気があり、5万円弱で引き合いがある。商業地は資材高騰などの影響で買い渋る傾向が強く、通りに面した商店跡地も買い手がつかない。万野原新田の工業地が唯一の上昇だったが、目立った取引はない。

裾野市、長泉町、清水町  住宅地は、長泉町が1・0%上昇で県内トップ。子育て世帯を中心に、新幹線口があるJR三島駅に近い下土狩や中土狩が人気で、16万~17万円台の取引があった。局部的な土地の供給不足で上昇傾向が続き、売り物件が出るとすぐに引き合いがある状況。裾野市は0・6%下落。生活しやすい伊豆島田や佐野で12万円台の売買実績がある。建設が進むトヨタ自動車の実証都市「ウーブン・シティ」に隣接する岩波は供給があるものの、買い手がつきにくい。清水町は0・1%上昇。北部の新宿は13万円台、伏見は11万円台の取引があったが、南部は低調。

御殿場市、小山町  御殿場市の住宅地は0・1%の伸び。JR御殿場駅周辺は物件が少なく、新橋や東田中で10万5千~12万円の高値の取引例がある。一方で駅周辺の商業地は低調。小山町は須走の動きが良い。1万4千~2万4千円程度の値頃感に加え、開発、道路整備などが好影響し、セカンドハウスを求める県外在住者も多い。

熱海市  商業地は8・1%上昇で県内最高の伸び率。コロナ禍を経て観光客が増加する中、駅前の田原本町や繁華街の銀座町で需要が高い状況が続く。供給量が少ないため注目度も高く「土地が出るとすぐに売れる」。交通の便が良い咲見町で40万円の取引があった。住宅地は0・6%上昇で、移住や在宅勤務の人によるマンションのニーズが堅調。

伊東市住宅地は0・5%の下落。継続2地点で上昇し、3地点で下落した。商業地3地点は全て下がり、住宅地とともに下落傾向が続いている。伊豆高原地域の八幡野、富戸などで別荘や移住先の住まいを求める需要が活発。中心市街地は供給が少ない。同地域では中古でも比較的安価な物件を求める動きが見られ、2万円程度の取引がある。

伊豆市、伊豆の国市、函南 町 住宅地、商業地ともに3市町の全調査地点で下落した。住宅地の平均変動率は伊豆市で2・0%、伊豆の国市で1・7%、函南町で1・2%の落ち込みで、下落傾向が続く。それでも通勤通学の利便性が高い伊豆箱根鉄道沿線では一定の人気はあり、伊豆の国市四日町で9万5千円前後の取引がある。商業地の動きは低調。

下田市、賀茂郡 東伊豆町の住宅地で2・0%下落するなど、商業地も含めた全地点で下落傾向が続く。住宅地が1・0%下落の下田市は市役所移転地周辺の蓮台寺や河内が堅調で、4万円台前半~半ばの取引。移住者らから沿岸への需要も一定あり、吉佐美で4万円台半ばの売買があった。西海岸の町は取引自体が低調で、中古物件の売買が中心。
 〈2024.3.27 あなたの静岡新聞〉

【西部】浜松市中央区、遠鉄沿線需要変わらず/掛川市、人気の駅近は供給限定的

浜松市中央、浜名区  中央区の住宅地は0・5%上昇。遠州鉄道沿線の人気は依然根強く、曳馬で15万円の売買があった。東名高速道へのアクセスが良く、道路整備が進む初生町では12万円台。商業地は0・9%上がった。スーパー、ドラッグストア、家族葬向け葬儀場やフィットネスジムの出店意欲が目立つ。浜名区の住宅地は0・1%上昇した。遠鉄沿線の市街化区域周辺は安定した取引が続く。小松の調整区域は6万円台後半から7万円台前半。旧引佐郡3町は下落傾向にあり、空き家が増えている。事業継続計画(BCP)の対策で工業地への関心が垣間見える。

浜松市の商業地の最高価格地点付近=同市中央区鍛冶町
浜松市の商業地の最高価格地点付近=同市中央区鍛冶町

浜松市天竜区  住宅地は2・0%、商業地は2・1%下落したが、直近6年間では下落幅が最も小さかった。宅地は山東などでの動きは乏しく、中山間地での売買実績はほぼない。商業地は二俣町などで新規開店の動きがあるが、影響は限定的。市有地工業用地化が進む阿蔵山周辺は産業集積地や高速道のインターチェンジに近く、関心が寄せられている。

湖西市  住宅地は1・0%の上昇。JR鷲津、新所原両駅周辺の好調が続き、鷲津では10万円台の取引もあった。トヨタ子会社の新工場稼働に伴う住宅需要の増加を見込んだ動きも一部でみられる。近年、津波の懸念から下落が続いた新居町は下げ止まりの傾向。商業地は0・2%上昇、工業地は変動なし。土地の供給が少なく横ばいの状態。

掛川市  住宅地は0・3%、商業地は0・7%それぞれ下落した。利便性が高い駅周辺が人気だが供給は限定的。中央3丁目や南2丁目は8万円台前半で推移している。6月で開業から1年を迎える高御所の大型商業施設周辺も一定の引き合いがあり、長谷で5万円台前半など。対照的に、市南部の取引は低迷していて、需要の二極化が進んでいる。

磐田市  住宅地は0・2%の上昇に転じた。建築費の高騰で全体的に取引が低調な中、近年の浸水被害や能登半島地震を受け、国府台や三ケ野台、見付北部など、高台や地盤の良い地区の需要は底堅い。見付では7万円台の取引があった。一方、沿岸部では低価格の宅地を求める動きもある。商業地は0・2%の下落、工業地は0・7%の上昇。

袋井市、森町  袋井市は住宅地が0・1%の上昇で、商業地は横ばい。利便性の高い葵町、愛野南などは堅調。人気の堀越で5万5千円台の売買実例。一方で、沿岸部と過去に台風被害が大きかった駅南地区は下げが続き、二極化が進む。森町の住宅地は0・4%の下落。少子化と人口減少が進み、引き合いは低調。中心部の森で2万5千円台の取引がある。

菊川市、御前崎市  菊川市の住宅地は0・2%下落。四つの調査地点のうち堀之内と本所は横ばいだった。東名高速道インターチェンジがある加茂は分譲地計画が進むなど人気は堅調で、6万円前後で推移している。御前崎市の住宅地は0・3%下げた。人口減少が進み全体的に動きは鈍い。中心部の池新田で3万円台の取引がある。
 〈2024.3.27 あなたの静岡新聞〉
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