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「議員バッジ」任期ごとの無償支給って必要?静岡県議会で見直し求める声も 

 国会議員や地方議員が身分証の代わりに着用する「議員バッジ」。任期ごとに無償支給する静岡県議会では、2023年県議選当選者に公布したバッジは1個3万9270円。金高騰を受けて18金製から14金製に変更してもなお、19年の前回選より高くなりました。県外では初当選時のみの支給や貸与という手段を選ぶ議会がある中、静岡県議から「県民に理解が得られるように」「議会の姿勢として改めるべき」と見直しを求める声が上がっています。

全国32道府県議会 当選のたびに新品を無償支給 

 47都道府県議会の議員が着けるバッジを巡り、7割近い静岡など32道府県議会が当選ごとに新品を無償支給していることが30日、共同通信の全国調査で分かった。本県など39都道府県は改選時、失職時とも返却が不要と回答。譲渡を禁じるルールがない議会もあり、売却が可能で、議員への利益供与に当たるとの指摘が出ている。調達コストが増加し、1人当たりの費用が1回10万円を超えるケースもある。

 山梨や石川、佐賀各県議会では昨年、県議らによるバッジの未返却や紛失が相次ぎ判明。税金の使途として有権者の理解が得られるかどうかが問われそうだ。
 任期ごとの無償支給以外は、初当選時のみに渡すケースや、支給ではなく「貸与」とする場合がある。貸与でも改選時、失職時に返却を求めていないと答えた議会は実質的に支給となっている。求めている8議会でも、富山は「期限を設けておらず、未返却の総数は不明」、佐賀は「返却依頼が徹底できていなかった」と回答、形骸化している実態が浮かんだ。
 山形、福井、大阪は初当選時のみ支給か貸与、三重は新人と元職が当選した場合のみ支給とした。福井はその後、コストを下げた上で貸与から任期ごとの支給に改めると決めた。
 譲渡禁止の定めがないと答えた議会は北海道、福岡など7道府県。福岡は1人当たりのバッジ費用が最も高く、県議選のあった昨年で10万5490円に上った。総額は約900万円で、前回選時点からほぼ倍増した。
 1人当たりバッジ費用の全国平均は約2万7600円。衆院1万5400円、参院1万6500円をいずれも上回った。
 18金素材のバッジも多く、材料となる金などの高騰により約8割の議会で費用が増えた。16議会がコスト削減で在り方を見直したと回答。金からの素材変更が目立った。
 任期ごとに貸与している佐賀では、200個超の所在が分からなくなっていると判明。同じく任期ごとの貸与と答えた石川は、返却義務が周知されていなかった。その後、議会は貸与から支給への変更を決めた。

 議員バッジ 国会議員や地方議員が身分証代わりに着用する。国政では1890年の第1回帝国議会から導入された。正式名称は「議員記章」。現在は衆参両院とも当選後に無償支給されている。衆院は忘れた場合、本会議場や委員室に入れない。都道府県議会は1959年4月以降の選挙を対象に「勲章型は金属で金色」といった様式の全国統一を申し合わせた。実際には素材や大きさ、議会名の刻印の有無がそれぞれ異なる。特権意識を助長しているとして、不要論も根強い。
 〈2024.3.31 あなたの静岡新聞〉

【23年10月・静岡県議会】他県のネット販売問題で事務局説明

 静岡県議会事務局は(2023年10月)31日の同議会決算特別委員会の総務分科会で、議員バッジは任期ごと県議に交付され、番号が振られていることを説明した。

静岡県議会
静岡県議会
 貸与制となっている他の県議会でレプリカが返還されたり、ネットで売りに出されたりしていたことが問題となったことを受け、委員が静岡県での取り扱いを尋ねた。
 同事務局によると、2023年の改選に伴って交付された議員バッジは14金製で1個税込み3万9270円。前回19年は18金製で同2万8620円だった。当選の年と各議員別の番号が記されているという。レプリカも使用できるが、議員の自己負担で作成する。
 総務分科会で同事務局担当者は「個人が分かるので管理に注意を」と議員側に求めた。委員は「期を重ねるたびに議員バッジをいただいても(県の)費用がかかる」などと指摘し、今後、仕様や貸与制導入などについて議員に意見を聞くよう要望した。
 〈2023.11.1 あなたの静岡新聞〉

【24年3月現在】事務局「具体的な話には至っていない」 静岡県議会の議員バッジには一つずつ番号が振られているため、仮に転売されても元の所有者が特定できるようになっている。ただ、他県では初当選時にのみ交付したり、改選や失職時に返還を求めたりしている議会があるため、「県民に理解が得られるように、静岡県も見直した方がいいのでは」「経費削減の意味もあるが、議会の姿勢として改めるべきだ」と主張する県議もいる。
 静岡県議会事務局の担当者は「2023年に改選して交付したばかりなので、現時点で見直しの具体的な話には至っていない。次回の県議選に向けて今後課題を整理し、改善すべき点があれば検討したい」と話した。
​ 〈2024.3.31 あなたの静岡新聞〉

他県の動きは? 兵庫や香川では「無駄」と辞退の流れ

 議員バッジを巡り、都道府県議の中には当選ごとの無償支給を辞退する動きが出ている。「いくつも必要ない」「無駄の極みだ」として、2期目以降は希望者のみ自費で購入する制度とするよう求めた議員もいる。ただ、議会による主体的な見直しにはほとんどつながっていないのが実情だ。

香川県議に支給されている14金製の議員バッジ
香川県議に支給されている14金製の議員バッジ
 無所属の丸尾牧兵庫県議(59)=当選5回=と、国民民主党の山本悟史香川県議(55)=同4回=は、昨年4月の統一地方選で再選された際、新たに支給されるバッジを受け取らなかった。
 兵庫は金を表面に張った銀製(1個1万4300円)、香川は14金製(4万6200円)をそれぞれ当選ごとに支給し、両議会とも返却は不要だ。価格は4年前と比べて兵庫1・7倍、香川1・9倍と急騰した。
 丸尾氏は昨年5月、当選2回以上は実費購入する制度への変更を議長に申し入れた。「バッジはあくまで象徴だ。住民サービス向上を含め、税金の有効な使い道は他にある」と強調するが、実現には至っていない。
 福井県議会のように、14金製で1人7万1500円のバッジについて、次回選から数千円程度の金メッキ製に変更すると決めた例もある。
​ 〈2024.3.31 あなたの静岡新聞〉

大自在(2022年9月18日)「威光絶大な議員バッジ」

 偽の国会議員バッジを着けて外務省に侵入し、先月逮捕された男は「偉い人になった気分になりたかった」と供述した。バッジはネットで購入したという。威光は絶大で、省庁を徘徊[はいかい]していたらしい。

 省庁の玄関は厳重な関門があり磁気カードで入館を認証する。ところが国会議員バッジがあれば顔パスならぬ“バッジパス”。どこまで議員に甘いのか。男がテロリストでなくてよかった。
 国会答弁する政治家の胸に議員バッジのほか多様なバッジを目にする。拉致問題解決を願うブルーリボンバッジが定番。昨年まで東京五輪パラのバッジが目立った。持続可能な開発目標(SDGs)の円形のバッジも多い。
 グリーンウオッシュという造語がある。環境保護を象徴するグリーンと、うわべを飾るとの語義があるホワイトウオッシュを組み合わせた。米国の環境活動家が、まやかしの環境配慮を糾弾する際に唱えた。一部の取り組みを際立たせ、全体の環境負荷を隠す企業の欺瞞[ぎまん]を見抜けと。
 エコ商品はコスト高になりがちで、環境に関心の高い消費者に支えられている。グリーンウオッシュはその信頼を裏切る。世間に「させていただきます文化」がはびこっていると訴えた人がいる。多様なバッジを誇示する国会議員は大丈夫だろうか。
 旧統一教会との接点を巡り各党は所属議員の身体検査に躍起。ただ、文化庁はこの団体を宗教法人に認証し、税の優遇措置を与えている。霊感商法がはびこるなら摘発はいつなのか。どこかちぐはぐだ。「させていただきます」の決別宣言はいらない。
 
地域再生大賞