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2024年の入社式 コロナ禍を経てどう変わった?

 2024年度スタートの4月1日、静岡県内各地で開かれた入社式。新型コロナウイルス感染症の流行が収束して5類に移行し、マスクなしの対面形式に戻した企業が多くみられました。コロナ禍を経て、式はどう変わったのでしょうか。新入社員を巡る企業の採用や初任給の動向とともに、特徴をまとめました。

トークセッションや会食形式も 経営陣、新入社員との対話重視

 静岡県内各地で1日、入社式が開かれた。新型コロナウイルス感染症が5類に移行し、多くの企業が昨年に続きマスクなしの対面へと形式の切り替えを加速。コロナ禍に学生生活を過ごした若者との対話を重視し、新入社員と役員の距離を縮めようと工夫を凝らす企業も見られた。

入社式でトークセッションを行う山浦敦社長(中央)=1日午前、浜松市中央区
入社式でトークセッションを行う山浦敦社長(中央)=1日午前、浜松市中央区
 浜松市中央区で開かれたヤマハの入社式では、同日付で就任した山浦敦社長が司会者の質問に答えるトークセッションを披露。製造ラインで働いた入社当時の経験が後の楽器設計に生かされたとし、グループ8社の新入社員152人に「会社は自分に成長のチャンスを与えてくれた。立場が変わり、みなさんにもそうした機会を与える」と語りかけた。新入社員の石田野々花さん(22)=同区出身=は「自身も挑戦を重ね、社会人として成長したい」と話した。
 新入社員137人が出席したTOKAIグループの式では、コロナ禍で中断していた会食形式の懇談を5年ぶりに実施。役員らが新入社員と一緒にテーブルを囲み、名前や配属などを確認しながら会話を重ねた。古坂楓河さん(22)=東京出身=は「リモートより対面の方が互いに分かり合え、社会人生活もイメージしやすい」と語った。
 TOKAIホールディングスの小栗勝男社長は「学生時代に対面で意思疎通する機会が少なかった世代と懇親の場を持てて良かった。人と会う楽しさを感じてほしい」と期待した。
 静岡ガスは新入社員と役員が大型スクリーンを用いて自己紹介し、趣味や座右の銘などを披露し合った。ヤマハ発動機は5年ぶりに対面形式の入社式を磐田市の本社で開き、約300人の新入社員が一堂に会した。スズキは浜松市で入社式を開き、鈴木俊宏社長がグループの新入社員約1380人に「チームスズキ」での団結を呼びかけた。
〈2024.04.02 あなたの静岡新聞〉

3年前のコロナ禍は… オンラインや分散形式、事前PCR検査も

※2021年4月2日 あなたの静岡新聞より(年齢は当時)

明電舎が沼津市内に会場を移して開催した本社採用者の入社式=1日午前
明電舎が沼津市内に会場を移して開催した本社採用者の入社式=1日午前
 新年度の1日、静岡県内企業が実施した入社式は、オンラインを活用した会場の分散やPCR検査の事前実施など、新型コロナウイルス感染症対策に配慮した新スタイルの式典で顔合わせの場を設け、経営トップらが期待の言葉を投げ掛けた。
 TOKAIグループは、静岡市葵区の会場と県内外の事業所19拠点をテレビ会議システムでつなぎ、分散形式で開催した。会場には新入社員125人の代表13人が出席し、大型スクリーンにオンライン出席者の映像を映し出して一体感を出した。
 大卒と高卒合わせて188人が入社したヤマハ発動機は前年と同様、全員での式は行わず、磐田市の本社で複数の部屋に分かれ、オンラインで日高祥博社長の訓示を聞いた。全新入社員には2週間前から検温や体調、行動の記録、同居家族の健康状態などの報告を求めたという。595人が入社したスズキも浜松市南区の本社のほか、オンラインも使って複数の寮や工場で分散開催した。
 大勢が集う会場での感染リスクを避けるため、式典前にPCR検査を取り入れる企業も目立った。河合楽器製作所は新入社員21人にPCR検査キットを事前配布して、陰性を確認。昨年は規模を縮小した上で社外で式典を行ったが、今年はコロナ前まで例年実施していた浜松市中区の本社内に会場を戻した。清水銀行グループや鈴与もPCR検査を事前に実施して陰性を確認した上で、対面形式で行った。
 明電舎は、例年都内で実施していた本社採用者73人の入社式を沼津市に変更した。首都圏の感染者数が高止まりしている現状を踏まえ、新入社員らの研修施設を有する同市に初めて会場を移した。明電舎の新入社員、山田智子さん(22)=静岡大卒=は「就職活動はオンラインが多く、会社に足を運ぶこともほとんどできなかったので、対面での入社式に臨めてうれしい。一日も早く自立して、社会に貢献したい」と意気込んだ。

新卒採用に積極的な企業増える 人手不足感背景【静岡新聞社100社アンケート】

 静岡新聞社の100社アンケートでは、従業員の充足感について「かなり不足」「やや不足」の回答が計78社と、前年調査から9社増加した。幅広い業種で不足感が強まり、2024年春の新卒採用は「(23年春よりも)大幅に増やす」「増やす」が12社増の計42社に上った。

 人手不足を感じる企業の内訳は製造業が37社、非製造業が41社。対応策(複数回答)は「中途採用の拡充」が最多の76社で、「新卒採用の拡充」54社、「省人化・省力化の推進」43社が続いた。前年と比較した来春の新卒採用計画は「同規模」が47社で7社減り、増加に転じる傾向が強い。一方、非製造業は「減らす」と「大幅に減らす」が計3社、「採用しない」が4社と温度差も見られた。
〈2024.01.03 あなたの静岡新聞〉

初任給はどうなる? 引き上げの動き続々 優秀な人材確保狙い

■スズキ 新人事制度に引き上げ盛る

スズキ
スズキ
 スズキは8日公表した2024年度に全面刷新する新人事制度で、新入社員の初任給引き上げを盛り込んだ。大卒は22万円から25万1千円に増額(引き上げ率14・1%)し、優秀な人材の確保につなげる。
 院卒は現行の24万2千円から27万3千円(同12・8%)、高校卒は17万9500円から20万1千円(同12・0%)となる。子育て支援や通勤など各種手当ても改善する方向で見直す。
 新人事制度で取り入れる職能資格制度は、各職種と階層に応じた役割と、求められる社員の能力要件を明確化する。業績と職務能力の評価を切り分け、短期の業績は賞与に、職務能力は昇級、昇格に反映する。
 60歳の定年後に再雇用する社員についても、体力や環境に支障がなければ、給与や業務内容を維持。従来は業務が限定されたり、給与が減額となったりしていた。
〈2024.03.08 あなたの静岡新聞〉

ヤマハ 春闘満額回答で引き上げ
 ヤマハは13日、2024年春闘で労働組合側に、ベースアップ(ベア)に相当する賃金改善を組合要求通り1万3千円、年間一時金も5・2カ月と満額回答した。ベア実施は11年連続。
 4月に楽器・音響機器製造の子会社を吸収合併するなど製造部門の国内回帰を図ることから、賃金改善で人材確保につなげることで労使で意見が合致した。
 初任給も引き上げ、大卒(現行24万円)は組合の要求の24万9千円に対して25万円、高卒(18万3千円)は19万3千円に対し20万円と要求を上回った。
 中田卓也社長は「昨今の物価上昇、経済の好循環に向けた企業の役割や賃金の引き上げの社会的要請を考慮した。厳しい事業環境において引き続き尽力してくれている従業員の頑張りに最大限応えた」とコメントした。
 23年春闘は賃金改善8千円、年間一時金5・9カ月で妥結した。
〈2024.03.14 あなたの静岡新聞〉

遠鉄グループも 大卒総合職は15年ぶり
 遠州鉄道(浜松市中区)は15日、新卒採用を行っているグループ14社の2024年度新入社員の初任給を、おおむね1万5千円引き上げると発表した。ICT職は3万5500円引き上げる。優秀で多様な人材の確保につなげる。
 引き上げ幅はグループ各社で異なる。遠州鉄道の大卒(総合職)は、現行から1万8千円増の22万3千円、高卒(建設技術職)は同額増の19万円。デジタル化を担うICT職は25万1千円になる。大卒(総合職)の引き上げは2009年以来、15年ぶり。
〈2023.06.16 あなたの静岡新聞〉

田子重 正社員給与3万円引き上げ、初任給も
 食品スーパーの田子重(焼津市)は28日までに、既存の正社員265人の給与を2024年1月に一律3万円引き上げると発表した。自社の持続的成長と採用競争力の強化を図る。
 平均昇給率は10・5%。24年4月入社の新卒社員の初任給も3万円上乗せし、大卒は25万円、専門・短大卒23万5千円、高卒23万円とする。
 曽根礼助社長は「従業員満足度を高めることで、人材をつなぎ留めるとともに、多様な新戦力の確保を継続していく」と語った。
〈2023.12.29 あなたの静岡新聞〉

スルガ銀行も
 スルガ銀行は8日、2024年1月から初任給を引き上げると発表した。新卒採用社員は同4月から適用する。職務給バランスを調整するため、既存社員は若手を中心に基本給を一律に引き上げるベースアップを実施する。
 優秀な人材の確保や社員の定着が目的。総合職の基本給は大卒が現行の20万5千円から24万円、短大・専門学校卒は16万3千円から19万8千円、高校卒14万8千円から19万3千円にそれぞれ引き上げる。
〈2023.12.09 あなたの静岡新聞〉
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