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自転車競技のパリ五輪切符獲得に貢献! 三島市拠点の「チームブリヂストン」の歩み

 2018年から三島市を拠点に活動する自転車競技の「チームブリヂストンサイクリング」。所属選手による単独編成で、パリ五輪出場枠を争う選考レースを戦い抜き、その中で日本記録を何度も更新。ついには、東京五輪では手にできなかった男子団体追い抜きの出場枠獲得に貢献しました。これまでの歩みを振り返ります。

拠点を移して6年 世界を目指す挑戦が結実

 国際自転車連合(UCI)は15日、トラック種目のパリ五輪ランキングを発表し、日本代表が複数種目で五輪出場枠を獲得した。14日までカナダで開催されたネーションズカップ第3戦でランキング対象大会が終了。日本は男女の4000メートル団体追い抜き(男子6位、女子10位)と男子チームスプリント(3位)でいずれも出場圏内に入った。この結果、男子は1カ国・地域に認められる最大の7枠、女子は個人種目のスプリント、ケイリンの1枠ずつを加えた6枠を確保した。日本自転車競技連盟は6月に代表を発表する。

ネーションズカップ第2戦の表彰式で銀メダルを手にする(左から)窪木一茂と松田祥位、橋本英也、児島直樹の4選手=3月、香港(日本自転車競技連盟提供)
ネーションズカップ第2戦の表彰式で銀メダルを手にする(左から)窪木一茂と松田祥位、橋本英也、児島直樹の4選手=3月、香港(日本自転車競技連盟提供)
 世界を目指して三島市に拠点を移し6年。自転車競技の名門「チームブリヂストンサイクリング」の挑戦が一つ実を結んだ。所属選手による単独編成で、パリ五輪出場枠を争う選考レースを戦い終えた。15日に国際自転車連合(UCI)が発表した五輪ランキングで男子4000メートル団体追い抜きの日本は6位。東京五輪では手にできなかった出場枠を獲得した。
 伊豆市の伊豆ベロドロームで東京五輪の開催が決まっていた2018年。チームは1964年の創設以来慣れ親しんだ埼玉県上尾市を離れ、三島市で新たなスタートを切った。掲げたのはトラック種目での世界挑戦。もともとロードレースの強豪で、中距離のチーム種目、団体追い抜きの五輪出場は悲願だった。だが、自国開催で手にできたのは橋本英也選手(30)の個人1枠だけ。まだ世界との距離は遠かった。
 あれから3年。チームはパリでの雪辱を胸に成長を続け、昨季から日本新記録を連発してきた。原動力は継続性。メンバー全員が近隣に住み、日ごろから練習をともにする。持久力が持ち味の児島直樹選手(23)は「同じメンバーで走り続けたからこその成果」と一体感に自信を見せれば、ベテラン橋本選手も「互いの長所を分かりきっている」と実感を込める。
 3月のネーションズカップ第2戦(香港)。チームは1回戦で3分48秒127をマークし、強豪のニュージーランドを倒した。日本代表として初めて3分50秒の壁を突破。最終的に銀メダルを手にし、五輪出場に当確ランプをともした。6年越しの取り組みが、形になった瞬間だった。
 まだ五輪本番に単独チームで臨めるかは決まっていない。ただ、団体追い抜きの出場枠により、1人で4種目を行うオムニアム、2人組で走るマディソンの出場権も確定し、2023年世界選手権男子オムニアム3位の今村駿介選手(26)は「出場を逃した東京五輪の悔しさを晴らす」と視線をパリに向ける。
 「世界基準の環境だからこそ強化につながってきた。あとは五輪で結果を残すだけ」と最年長34歳の窪木一茂選手。欧米勢が席巻してきた自転車競技史に、新たな歴史を刻む覚悟だ。
 (下田支局・伊藤龍太)
〈2024.04.17 あなたの静岡新聞〉

移転当時は東京五輪前 選手強化、自転車文化醸成が狙い

※2017年12月22日 静岡新聞朝刊

自転車競技チームの活動拠点新設を受け、記者会見に出席した豊岡武士市長(前列右から2人目)ら=都内
自転車競技チームの活動拠点新設を受け、記者会見に出席した豊岡武士市長(前列右から2人目)ら=都内
 ブリヂストンサイクル(埼玉県上尾市)は21日、同社が所有する自転車競技チームの活動拠点を三島市に新設すると発表した。伊豆市の伊豆ベロドロームで開催される東京五輪自転車競技を視野に選手強化を図るとともに、周辺地域の自転車文化を醸成する狙い。

 東京都内で記者会見した関口匡一社長は「イベント開催などを含めて幅広く活動する。地域に文化を根付かせ、レガシー(遺産)を創出したい」とあいさつした。同席した三島市の豊岡武士市長は「市を挙げて歓迎する。サイクリストの来訪も増加傾向にあり、オリンピックの機運は高まっている」と強調。県東部地域スポーツ産業振興協議会の稲田精治会長も出席した。

 会見で併せて発表された2018年のチーム体制によると、選手は15人が所属し、パラ競技も含めて国際大会の上位で活躍する選手が在籍する。一部は三島市に居住しながら練習していくという。イベントや子ども向け教室なども企画し、地域と積極的に交流する考え。会見ではチーム名を「ブリヂストン・アンカー・サイクリングチーム」から「チーム ブリヂストン サイクリング」に変更することも発表された。

【杭州アジア大会】自転車男子団体追い抜き「金」 悲願のパリへ弾み

※2023年9月28日 静岡新聞朝刊

男子団体追い抜き決勝 レース終盤に力走する(奥右から)橋本英也、児島直樹、窪木一茂。手前は松田祥位=中国・杭州(本社臨時支局・二神亨)
男子団体追い抜き決勝 レース終盤に力走する(奥右から)橋本英也、児島直樹、窪木一茂。手前は松田祥位=中国・杭州(本社臨時支局・二神亨)
 杭州アジア大会は27日、中国浙江省杭州市で自転車競技トラックを行い、三島市に拠点を置くブリヂストンの松田祥位、窪木一茂、橋本英也、児島直樹で組んだ男子4000メートル団体追い抜き決勝で3分52秒757をマークして金メダルに輝いた。
三島で鍛えた健脚に手応え  【杭州=本社臨時支局・大沼雄大】三島市を拠点に活動する自転車競技の「チームブリヂストンサイクリング」。トラック種目を中心に五輪出場を目指して埼玉県から移転し、5年がたつ。「団体追い抜きで世界と戦う」-。27日に中国・杭州アジア大会を制した男子チームが見据えるのは、来年パリ五輪での悲願成就だ。
 東京五輪を契機に、日本自転車競技連盟は伊豆市のサイクルスポーツセンターにトラック種目の強化拠点「ハイ・パフォーマンス・センター(HPC)」を整備。ブリヂストンも五輪会場の伊豆ベロドロームでの強化に本腰を入れるため、2018年に三島市に拠点を新設した。メンバーは同市に住みながら練習漬けの日々を送ったが、五輪出場はかなわなかった。
 本番を観客席で見た今村駿介選手(25)は「オリンピックでしか感じ得ないレベルの高さがあった。やっぱりオリンピックが一番の大会」と、世界トップレベルで争う場所への憧れと悔しさをかみしめた。チームの照準は、そこから3年後のパリに移った。
 HPCと連携した着実な強化に加え、成長を後押ししたのが五輪出場枠の拡大。若手エースの今村選手が「従来の8カ国では際どかったが、10カ国に増えて出場が現実味を帯びた」と話す通り、チームの士気は一気に高まった。今季は5月の全日本選手権、翌月のアジア選手権で日本新記録を連発。メンバー最年少の児島直樹選手(22)は「今はオリンピックに出場するだけでなく、結果を残す意識に変わっている」と手応えを口にする。
 貫禄のアジア制覇で弾みを付けたチームは、ここから五輪枠を懸けた本当の勝負に挑む。「日本の自転車競技に期待感を持ってもらいたい」と今村選手。三島で鍛え上げた健脚をパリでも披露する。

「三島からパリへ」 観戦イベントで地元も応援

※2024年3月23日 静岡新聞朝刊

選手に声援を送る来場者=三島市
選手に声援を送る来場者=三島市
 三島市を拠点に活動する自転車競技の「チームブリヂストンサイクリング」の選手らが出場するトラック種目の国際レース「ネーションズカップ」(香港)の観戦イベント(JKA主催)がこのほど、同市のホテルで開かれた。約200人がパリ五輪出場を目指して戦う選手らに声援を送った。
 男子マディソンには同チームに所属する窪木一茂、橋本英也組と今村駿介、児島直樹組が出場した。来場者はバルーンを打ち鳴らし、選手を後押しした。五輪出場経験のある窪木、橋本組が終盤に大量点を獲得すると、会場の熱気は最高潮に。3位入賞を果たした2人に大きな拍手を送った。
 五輪に3大会連続出場した飯島誠さんと元日本代表の深谷知広さんがゲスト参加し、日本勢の状態や戦術について解説した。同チームの選手で構成する男子団体追い抜きは大会初日に銀メダルを獲得するなど好調で、飯島さんは「パリの表彰台が見えてきた」と語った。
 パリ五輪出場枠が決まる五輪ランキングは4月15日に決定する。同レースは、パリ五輪出場枠選考期間終盤の重要な大会だった。
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