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清水市農業協同組合が発行した 『清水昔ばなし』、 その本を参考に話の舞台となった 場所を巡ってきた。

昔ばなしを辿る。

1.鹿島神社の要石 2.要石に残るのみの跡 3.和物所稲荷神社

図書館で見つけた一冊の本。清水市農業協同組合が2002年に発行した『清水昔ばなし』。色彩豊かで、かわいらしいイラストが添えられ、清水に伝わる昔話が多く紹介されている。今回は、この本を参考にして話に登場するスポットを散策してきた。

始めに訪れたのは、西久保にある『鹿島神社』。ここには『要石』と呼ばれる石があり、次のような話が伝わっている。

昔一人の石工がいて、ある時この山から突き出している石を割ることになったという。石は硬く、何度か打ち込むことでようやくのみが食い込んだ。次を打ち込むために石工がのみを引き抜くと、石から血が噴き出してきたそうだ。この出来事の後、石に縄を張り『神石(しんせき)』として大事に祀るようになったという。

今でもその石は、本殿左奥の大きな木の根元に顔を見せている。木の根元をよく見ると、のみの跡らしきものがあった。また、石の根元を掘ってもその終わりは見えず、昔からどんな天変地異にも微動だにしないとも伝えられているそうだ。

(参考)清水市農業協同組合(2002)『清水昔ばなし』※現在、清水市農業協同組合での取扱いなし

次に訪れたのは、八坂南町の『和物所(あいなんじょ)稲荷神社』。ここに伝わるのは、とても悲しい話だ。

京の都にお菊という娘がいたという。愛する侍が鎌倉へと旅に出たため、その後を追って自分も鎌倉へ向かったが、疲れから体が弱って動けなくなってしまう。これを見た村人たちが、小屋を建てて介抱してくれたそうだ。元気になったお菊はその小屋に住みつつ、旅人に『あえもの』を売りながら愛する侍が帰りに立ち寄るのを待っていた。

ところが、京に住んでいて、お菊に思いを寄せていた別の侍がこの場所を訪れ、「私の意にそわぬなら仕方ない」と彼女を斬り殺してしまったという。それからというもの、街道を通る旅人にお菊の霊が祟るようになった。村人たちはその霊を鎮めるために、お菊が住んでいた場所に石の祠を建ててお祀りしたそうだ。神社の名前の由来は、お菊があえものを売っていた場所にちなんでいるという。

またこのことから『お菊稲荷』とも呼ばれており、“おこり(マラリア)の平癒”、“失物探し”の願をかけると必ず叶うとか。そして、叶えてもらったお礼に油揚げを供えるのが、習わしになっているそうだ。小屋の裏手に石の祠らしきものがあったが、それが元々の祠なのだろうか。

最後に訪れたのは、庵原町にある『一乗寺(いちじょうじ)』。ここに伝わるのは、いたずらキツネと和尚さんの話だ。寺の裏山に住む一匹の年老いたキツネが、毎日悪さをして和尚さんを困らせていた。そんなキツネを和尚さんがこらしめるストーリー(一乗寺の羅漢さん参照)。話の舞台となった、一乗寺の羅漢堂の中をのぞくと、驚くことにいたずらキツネの姿があった。

まだまだ紹介できなかった話がたくさんあるので、また機会があれば本を参考に清水を回ってみるのも面白いかもしれない。

羅漢堂

『一乗寺の羅漢さん』

羅漢堂の中のキツネ

ある時のこと。狐はいつものように山からやってきた。そうっと寺をながめると、和尚さんの姿はどこにも見あたらない。「しめしめ、和尚のヤツは留守らしい。この隙にお供え物をいただくとしよう。」狐はひたひたと本堂の中へと入り込み、お供え物を荒らしはじめた。

ところがどっこい、実は和尚さんは狐をひとつこらしめてやろうと物かげに身をひそめ、じっと狐がやって来るのを待っていたのだった。「この性悪狐め。もう逃がさないぞ。」和尚さんは手に棒をつかむと狐になぐりかかった。狐はたいそう驚いて羅漢堂へと逃げ込んだ。和尚さんも狐を追って羅漢堂へ入っていった。

しかし、お堂の中を見ると、いつもと変わらぬように十六羅漢さんがあるだけだった。「おかしいなぁ、狐はどこへ行ったのだ?」和尚さんはもう一度心を静めて羅漢さんの数をかぞえてみた。すると十六体しかないはずの羅漢さんが十七体もあった。(さては、この中の一体に狐が化けているのだな。)と思った和尚さんは、お堂の前に仁王立ちになると、「羅漢さん動け!!」と、大声でどなった。

狐は動かないと化けているのがばれると思って、ガタガタと動いたので和尚さんに見つかってしまい、とうとう捕まえられてしまったとさ。※『清水昔ばなし』より一部抜粋

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